「転職者が成長する企業」上位を外資コンサルが独占 転職エージェントは苦笑「並の人では難しい」

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   新卒採用の激化に伴い、初任給の引き上げや配属希望の確約など、各社がさまざまな工夫をこらしている。長年昇給が据え置かれてきた氷河期世代から「私たちはなんだったんだ」と愚痴がこぼれるほどだ。

   そんな中、引く手あまたの超高学歴新卒学生の応募が殺到しているのが、外資系コンサルティングファームだ。マッキンゼー・アンド・カンパニーやA.T.カーニー、ローランド・ベルガーやボストン・コンサルティング・グループでは、新卒採用者に占める旧帝大と早慶卒が大半を占めているという。

  • 転職者が成長する企業とは(写真はイメージ)
    転職者が成長する企業とは(写真はイメージ)
  • 転職者が成長し、評価される企業ランキング(OpenWork「働きがい研究所」より)
    転職者が成長し、評価される企業ランキング(OpenWork「働きがい研究所」より)
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  • 転職者が成長し、評価される企業ランキング(OpenWork「働きがい研究所」より)

新卒採用は「9割超が東大卒」、経験者はさらに厳しく

   初任給が500~700万円にのぼるとされる外資系コンサル人気の理由は、高給だけでないようだ。OpenWork「働きがい研究所」は2024年12月、自社サイトに投稿された口コミの分析結果に基づく「転職者が成長し、評価される企業ランキング」を発表した。

   中途入社者の「20代成長環境」と「人事評価の適正感」に対する評価の高さを集計したところ、1位にマッキンゼー・アンド・カンパニー、2位にローランド・ベルガー、3位にA.T. カーニーが入り、TOP3を外資系コンサルティング会社が占めた。

   マッキンゼーのコンサルタント社員は、こんな口コミを寄せている。

「人の成長にかなり注力している会社。定期的に実施されるグローバル研修、日本支社独自のコンサルスキル研修、プロジェクトメンバーが相互に成長に向けたフィードバックをし合う仕組み等、よくできた仕組み・豊富なリソースを投入しており、結果としてコンサルタントの成長スピードは早い。特に若手に関して」

   ある転職エージェントでヘッドハンターとして働くAさんは、ランキング結果を見てこう苦笑している。

「上位に並んでいるのは、いずれもSランクといわれる旧帝大や早慶上位学部を卒業した超高学歴の学生が入社する会社ばかり。マッキンゼーでは新卒は数十人しか採用せず、採用倍率は数百倍、その9割超が東大卒と言われる高いハードルです。さらに経験者採用は専門性や実績などで選考の厳しさが増すので、転職はさらに狭き門となります。

『転職者が成長し、評価される企業』といっても、素質の高い一握りの超優秀層が、同じような優秀な先輩・上司に囲まれて仕事をするだけでも成長は約束されているようなもの。しかし並の人が入っても同じように成長できるのか、ついていけるのかというと難しいでしょうね。一般的な成長環境としての評価には慎重になるべきで、個人的には『特殊すぎて参考にならない』という感想です」

「戦略系」と「デリバリー系」ではまったく違う

   優秀層でのコンサル人気の中、最近は「コンサルファーム」を標榜するだけで志望者が増え、人気が高まっている会社もあるという。

   しかしAさんは、新卒採用にしろ転職にしろ「業界研究」をきちんと行ってから臨んで欲しいという。Aさんが「基本中の基本」と指摘するのは、コンサルファームにもいろんな種類があるということだ。

「役割や機能を細分化し、仕事の中身をよく見極める必要があります。切り口はいろいろありますが、大きく『シンクタンク』『戦略系』『実行支援系』の3つに分ける方法があります。シンクタンクは、基本的に調査や研究、提言までが守備範囲。戦略系は、大手企業の経営戦略の策定支援を行い、そこから先はやりません」

   経営戦略とは、大手上場企業が3年ごとに策定する「中期経営計画」が主で、基となる市場分析も手掛けるという。

「企業経営に大きな影響を与えるM&Aの助言まで含める場合もありますが、基本的には『絵に描いた餅』で多額のフィーを得ています。あとはうまく行こうが行くまいが企業の責任なので、『安全な高みから口を挟んでいるだけ』と揶揄されることもあります」

   「実行支援系」は、経営戦略で示された方向に沿って個別戦略を立てたり、実行のためのプログラム策定や推進を手掛けたりする。

「個別戦略には『人事』や『財務』『サプライチェーン』などがありますが、例えば『DX』の実行支援だと、DX戦略の策定支援を行い、基幹システムの刷新など具体的な開発や運用支援まで手掛けることがあります。システム開発の実行支援は、プロジェクトマネジメントが中心ですが、これも『デリバリー系』のコンサルと呼ばれることがあります」

「転職するときは肩書きにまどわされず、ちゃんと中身を見て」

   戦略から実行支援、運用までのプロセスを一気通貫で引き受けるのが、アクセンチュアやBIG4と呼ばれるデロイト・EY・KPMG・PwCの「総合コンサルティングファーム」だ。運用支援などは労働集約的な仕事も多く、例えばアクセンチュアは日本法人だけでも2.5万人の従業員がいる。

   一方、前出のランキング上位企業は「戦略コンサルティングファーム」で、知識集約型の少数精鋭だ。例えばローランド・ベルガーはグローバルで約3,000人、日本オフィスには100人程度しかいない。

   近年ではシンクタンク系や戦略系のファームも、事業拡大に向けて実行支援まで手を拡げている。ただしその場合でも、戦略を手掛けるチームと、実行支援をするチームは別だ。総合系ファームでも、戦略系チームの方が給与は高く、「Up to Out(昇進するか、さもなくば退職するか)」の傾向が強い。

「戦略コンサルの仕事は、人材の質が事業の競争力と直結しますので、採用のハードルは決して下げません。『戦略系』と『デリバリー系』では、同じコンサルでも求められる資質や仕事の内容がかなり異なります。最近は普通の営業を『コンサルティング営業』と呼ぶ会社もありますし、転職するときには肩書きに惑わされず、ちゃんと中身を見て自分に合った仕事を選んでほしいと思いますね」
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