「食べこぼし放置」は死の危険さえある 50代から衰え始めるのどの筋肉や神経、誤嚥性肺炎が怖い

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   口の中が乾く、食事中に時折むせる、食べ物がかみにくくなっているとしたら、それは口の機能低下のサインかもしれない。シニアの口腔機能低下は全身の衰えにつながり、最悪の場合、死の危険さえあるというから、穏やかではない。口腔機能の維持・向上に向けた対策を紹介する。

  • 口腔機能低下は全身の衰えにつながる
    口腔機能低下は全身の衰えにつながる
  • 画像は東京都健康長寿医療センターのプレスリリースより
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  • 口腔機能低下は全身の衰えにつながる
  • 画像は東京都健康長寿医療センターのプレスリリースより

食事中にむせるのは誤嚥のサイン

   口は食べ物をかみ、のみ込む、言葉を発する、呼吸するといった機能を持つ。消化・自浄作用がある唾液を含め、口腔機能が機能低下の一歩手前にある状態を「オーラルフレイル」と呼ぶ。日本老年医学会と日本老年歯科医学会、日本サルコペニア・フレイル学会は2024年4月に発表した合同ステートメントで、オーラルフレイルについて「全身のフレイルや筋肉減弱(サルコペニア)、低栄養を引き起こす」と指摘したうえで、死亡リスクが高まると警鐘を鳴らした。

   オーラルフレイルは滑舌低下、食べこぼし、むせ、かめない食べ物が増えるといった、ささいな口腔機能の低下から始まる、というのは日本医学会連合だ。食べ物がかみにくいと感じ、やわらかいもの中心の食事になってしまうと、かむのが疎かになり、さらにもっとかめない状態へと「負の連鎖」が進む。食べ、のみ込みが困難となり、栄養不良によって全身のフレイルに陥るというわけだ。

   のみ込みがうまくできない嚥下(えんげ)障害は、確かに命にかかわる恐れがある。のどの筋肉や神経などの嚥下機能は50代から衰え始めるという。嚥下したものは口から食道、胃に送られるが、誤って気管に入ってしまうのが誤嚥(ごえん)であり、食事中にむせるのは誤嚥のサインだ。誤嚥を起こすと、肺炎を発症しやすくなる。誤嚥性肺炎は今、日本人の死因第6位。注意が必要だ。

かむ回数、うがいの回数を増やす

   唾液が出にくくなる「口腔乾燥症(ドライマウス)」にも気をつけたい。ある報告によると、高齢者の唾液分泌量は若い時の10分の1まで低下するという。薬の影響も大きい。降圧薬や鎮痛薬、鼻づまりの薬に含まれる抗ヒスタミン薬などは口腔乾燥の副作用が起きやすいからだ。

   対策として、日本口腔保健協会は、(1)かむ回数を増やして唾液の分泌を促進する(2)こまめに水分補給をする(3)うがいの回数をふやす(4)室内の温度・湿度に気をつける(5)乾燥予防や保湿用の洗口剤を使う――を挙げる。特に重要なのは、よくかむことだ。唾液の分泌で食べ物がのみ込みやすくなり、消化もよくなる。食材を大きめに切り、硬い根菜類などを増やすといった工夫を凝らしたい。ガムをかむのもいい。

   日々のケアも大事だ。東京都健康長寿医療センター研究所は(1)毎日の歯磨きと定期的な歯科受診(2)口腔関連のトレーニング=肩と首のストレッチ、ほおや舌のトレーニング、唾液腺マッサージ――を勧め、「バランスの良い食生活が重要」と呼びかけている。

   口腔機能の低下は、何も高齢者に限った話ではない。やわらかい食材に偏りがちな現代人はしっかりとかむことが減った。対策はいつ始めても早すぎることはない。

(フリーライター 倉井建太)

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