外国人が母国の運転免許を日本の免許に切り替えられる「外国免許切替(外免切替)」制度をめぐり、今国会で質疑が相次いでいる。坂井学国家公安委員長は、2025年3月3日の衆院予算委で、課題があり法改正も視野に「制度と運用の両面から検討を進める」と明らかにした。
米国の実地試験は簡単だが筆記試験が大変
まず、日本の免許制度がどうなっているか。日本の運転免許がない人が日本で自動車を運転するための方法として、日本の運転免許を取得しない場合は(1)国際運転免許証により運転(2)外国の運転免許証に日本語訳を添付して運転、の2つがあり、日本の免許を取得する場合は(3)通常の免許試験により取得(4)外国の運転免許からの切り替えにより取得、がある。(3)と(4)はともに筆記試験と実地試験がある。なお、日本国内で国際運転免許証により自動車運転できるのは上陸日から1年間だ。
筆者の米国での経験を言えば、日本と類似している。州によって異なるが、短期滞在であれば、国際運転免許証と日本の運転免許証を携行すればよく、長期滞在では現地の運転免許を取るが、日本で免許があれば実地試験免除のところが多いようだ。もっとも、米国の実地試験は簡単で、日本で運転経験がなくても数時間の講習で合格できる程度だ。ただし、筆記試験はほぼ日本同様で、問題も多く引っ掛けもあり大変だ。
日本人が中国で運転するのはハードル高いのに
外免切替が問題になる背景として、日本の運転免許について、日本人が高額な取得費用がかかるのに、中国人観光客が滞在先ホテルで簡単に安価で取れることがある。ちなみに、ジュネーブ条約に加盟していない中国では、国際運転免許証は有効でない。 短期滞在者・長期滞在者ともに中国で申請を行い、中国の運転免許証を取得する必要がある。これはかなりハードルが高い。
しかも、外免切替で、実地試験の合格率は3割程度だが、筆記試験では10問の○×方式で合格率9割程度だ。さらに、短期滞在でも外免切替で実地試験が厳しいとはいえ筆記試験がやさしすぎる。日本人が中国に短期滞在でも中国免許を取得する必要があるのと差がありすぎる。こうした問題では、相互主義が原則だ。日米ではほぼ相互主義に近いが、中国とはそうなっていないのが問題だ。相互主義の観点から、中国人観光客でも外免切替を認めずに日本の通常免許を取得するようにすべきだ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。