東京・高田馬場の路上で刃物で刺され亡くなった最上あいさん(22)は、ライブ配信サイト「ふわっち」で活動し、収益も得ていた。
金銭トラブルがあったと報じられた容疑者の男(42)は、視聴者の1人だった。2人が出会ったふわっちとは、どんなサイトなのだろうか。
JR山手線を徒歩で1周する企画を行っていたが...
「1つお願いがあって...」。最上さんが知り合いの配信者に対し、ライブ配信でこう切り出す。
最上さんの発信によると、2025年3月11日に都内のJR山手線を徒歩で1周する企画を立てていた。視聴者から投げ銭としてもらったアイテムに応じてサイコロを振り、その目の数によってゲームをするものだ。1駅戻る、軽食するなどのアイデアが出たが、2つの目の内容が埋まらないので配信者にアイデアを依頼した。
配信者らからは、「振り出しに戻る」「ダンス」などのアイデアが出て、最上さんは、「6が出たら、駅前でダンス踊ります」と約束していた。
ところが、楽しい企画のはずの11日に、事態が暗転してしまった。
報道によると、最上さんは同日午前9時50分ごろ、高田馬場の市街地でライブ配信中に、いきなり容疑者の男に襲われ、首や胸などをサバイバルナイフで数十回刺された。病院に搬送されたが、死亡が確認された。
男は、駆け付けた警察官に殺人未遂の現行犯で逮捕され、その後殺人の疑いで取り調べを受けているが、「殺そうとは思わなかった」と供述しているという。21年12月から最上さんの配信を見始め、翌22年8月から、最上さんが当時勤めていた飲食店に行くようになった。男は、最上さんの配信を見て居場所を特定したといい、「携帯料金や当面の生活費がないので貸してほしいと頼まれた」「200万円以上を貸していたが返してもらえなかった」と動機を話しているという。
男は24年1月、地元の栃木県警に金銭トラブルについて相談しており、最上さんも警察に相談していたと報じられている。
2人が出会ったふわっちは、IT企業「jig.jp」(東京都渋谷区)が15年9月からサービスを手がけ、子会社の「A Inc.」が運営している。
10段階の配信者グレード、最上さんは最上位
ふわっちの公式サイトによると、普段の配信内容やその盛り上がり度合いに応じて、10段階の配信者グレードがある。グレードはイベント参加の条件やグループ分けの基準に使用され、それが高いほど収益もアップする仕組みだ。
グレードのランクは、最下位の「ホワイト」から最上位の「プラチナ+」まである。配信終了時にグレードが更新され、1日配信されないと再計算され、配信者はそのたびに一喜一憂することになる。イベント入賞特典として付与される特別な「ダイヤモンド」グレードもあった。
他の配信者と一緒にできるホストコラボもあるが、グレードによって制限され、「ブロンズ」以上の配信者なら、誰にでもリクエストを送れる。
最上あいさんは、2500人ほどのフォロワーがいて、最上位の「プラチナ+」グレードだった。
プロフィールには、受賞歴も紹介されており、2月3~5日配信のイベントの総合ランキングでは、1位になった。ホワイトデーを前にした3月5日のイベントでも、ランキング4位だった。最上さんは、24年から80以上も受賞しており、配信者の中でも、トップレベルの人気を集めていたことが分かる。
そんな人気者を襲った悲劇について、ふわっちのサービスを手がけるjig.jpは11日、公式サイトで「本日の報道に関するお知らせ」を出した。
そこでは、「当社として、本事件に関する事実確認を行い、警察への情報提供等の捜査協力を行っております」と報告したうえで、「現在、捜査機関による捜査中であることや、被害者のプライバシーに対する配慮からも現時点において当社からの本事件に関する詳細の発信は差し控えさせていただきます」などとしている。最後に、「謹んで哀悼の意を表します」と結んだ。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)