スマホにこだわりを持つ層に人気がある「格安スマホ」。利用者が一番多いのは、また、満足度が一番高いのはどこだろうか。
モバイル専門の市場調査を行うMMD研究所(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2025年3月15日に発表した「2025年2月MVNOのシェア・満足度調査」によると、利用率(シェア)の伸び率と総合満足度ともに「日本通信SIM」がダントツ1位になった。
折りも折、フリマアプリ大手「メルカリ」が新サービスを導入して参入を発表。格安スマホ業界はどうなるのか。調査担当者に聞いた。
シェア伸び率1、2位は「日本通信SIM」と「J:COM MOBILE」
MMD研究所の調査(2025年2月1日~6日)は、スマホを所有している18歳~69歳の男女4万人を対象に予備調査が行われ、その後、主要な「MVNO」(格安スマホ)の7つのサービスのユーザー(150人ずつ計1050人)に本調査が行われた。
調査対象となったのは、「OCN モバイル ONE」「楽天モバイル(MVNO)」「mineo」「IIJmio」「イオンモバイル」「J:COM MOBLIE」「日本通信SIM」の7つだ。「OCN モバイル ONE」と「楽天モバイル(MVNO)」は新規受付を停止しているが、利用者シェアが上位に位置するため調査対象とした。
まず、4万人のうち、通信契約しているスマホを所有している3万6836人に、メインで利用している通信サービスを聞くと、格安スマホを契約している割合は9.1%となった。格安スマホは2019年の13.2%をピークに2021年以降、9%台が続いている【図表1】。
次に、格安スマホを利用している3358人に聞いた契約しているサービスを聞いたのが【図表2】だ。「OCN モバイル ONE」(17.1%)が最も多く、次いで「mineo」(14.4%)、「IIJmio」(13.9%)の順となった。
主要5サービスで、前回(2024年9月)との利用率(シェア)を比べると、「日本通信SIM」(1.5ポイント増)の伸び率が最も高く、次いで「J:COM MOBLIE」(0.4ポイント増)、「IIJmio」(0.3ポイント増)が目立つ【図表3】。
予備調査から抽出した主要7サービス利用者1050人に、総合満足度を聞いた結果が【図表4】だ。満足度を、料金(安さ)、サービス(オプションプランの豊富さ)、通信品質(つながりやすさ)、顧客サポート(サポート対応のよさ)の4部門で聞き、合計ポイント(1000満点)で総合満足度をランキングした。
その結果は「日本通信SIM」(808点)がずば抜けて高く、次いで「OCN モバイル ONE」(769点)、「mineo」(760点)、「IIJmio」(757点)となった。
格安スマホは、若年層よりコスパ重視の40~50代に人気
J‐CASTニュースBiz編集部は、MMD研究所の調査担当者に話を聞いた。
――格安スマホのスマホサービス全体に占めるシェアの推移を見ると、ここ数年9%台で横ばい状態です。これは、伸び悩んでいるのか、それとも大手の安いサブブランド攻勢にも耐えて頑張っているのか、どちらでしょうか。
担当者 格安スマホのシェアは、2019年9月(13.2%)のピーク後、一時的に増加したものの、再び低下して9.1%となっています。この理由は、2020年に「楽天モバイル」がMNOに参入したことや、「UQ mobile」がKDDIのサブブランドへ移行したことで、シェアが低下したように見えることも挙げられます。
また、格安スマホでシェアが高い「OCN モバイル ONE」や「楽天モバイルMVNO」が新規受付を停止したため、全体のシェアがやや減少傾向にあります。しかし、ほかの格安スマホでは利用率が増加しているサービスも見受けられます。大手サブブランドと競り合いながらも、善戦していると言えるでしょう。
――どういう方面で善戦しているのでしょうか。
担当者 利用者が若年層よりも40代~50代の層が厚くなっている点です。若年層が格安スマホを選ぶ理由は、価格面で非常に魅力的であることですが、若者が圧倒的に多いというわけではありません。
各社はシンプルで低価格なプランやデータ通信量の柔軟な取り扱いなどで、特にコストパフォーマンスを重視するユーザーに支持されています。これらの要素が、若年層に対しても一定のアピールポイントになっていると考えられます。
「日本通信SIM」は3つのプランで安さを徹底追及
――【図表4】の総合満足度を見ると、「日本通信SIM」が圧倒的にトップです。また、【図表3】の利用率の伸び率でもダントツの1位で、一人勝ちの状況ですが、「日本通信SIM」はどんな点がユーザーの心をひきつけたのでしょうか。
担当者 まず、ユーザーが格安SIMに求めるのは何よりも価格です。通信料金をとにかく安くしたいというニーズにどう応えるか、各社は競争しています。その中で「日本通信SIM」は合理的プランというプランを3つ用意しており、「合理的シンプル290プラン」ではデータ量1GBを290円という格安料金で提供しています。
また、昨年(2024年)9月には「合理的みんなのプラン」と「合理的50GBプラン」を発表、その中でそれぞれ料金を据え置いたままデータ通信料の増量に加え、通話5分かけ放題、または月70分無料通話を提供する、お得な料金プランを始めました。
このように、通信料金を抑えたい利用者の声を受け止め、積極的な改善を行っている点がユーザーからの高い満足度に表れています。
――【図表3】の利用率の伸び率では、「J:COM MOBILE」と「IIJmio」の伸びも目立ちます。それぞれどういう特長があるのでしょうか。
担当者 「J:COM MOBILE」はケーブルテレビが母体のJ:COMのモバイル通信サービスです。テレビや光回線サービスとセットで契約することで、データ容量が増量される「データ盛り」などの特典が好評を得ていると考えられます。また、訪問販売も特徴的で独自の営業ルートを持っています。
「IIJmio」は格安スマホの老舗で、法人にも強く、総務省の通信市場動向調査でも最大手のサービスです。特に人気なのがスマホ端末のセールで、端末が安く購入できる点がユーザーにとって魅力です。また、災害時や通信技術の広報発信も信頼が高いことが特徴です。
メルカリ参入、競争の活性化とサービス柔軟化の刺激剤に
――ところで、フリマアプリ大手のメルカリが2025年3月4日、「メルカリモバイル」として格安スマホ市場への参入を発表しました。NTTドコモの通信回線を借り、余ったデータ通信量を個人間で売買できる初のシステムを導入するとしています。
メルカリの狙いは何だと考えますか。また、メルカリの参入によって格安スマホ業界は今後どうなっていくでしょうか。
担当者 「メルカリモバイル」で提供される、余ったデータ容量を個人間で売買できる新機能は、データ利用の効率化を目指した革新的なアプローチでしょう。
データ容量の無駄を減らし、ユーザー自身が必要なデータ量に合わせて選択できる点が、特にデータ通信を効率よく使いたいユーザーにとって大きな魅力となるでしょう。
また、メルカリが参入する背景には、すでに広範なユーザー基盤を持ち、フリマアプリの運営でつちかった高いマーケティング力や顧客ニーズの把握力があります。この点で、ほかの格安スマホと差別化できる大きなポテンシャルを秘めています。
「メルカリモバイル」の参入により、新しいサービス展開が業界の競争環境をさらに活性化させることが期待されます。しかし同時に、格安スマホ業界全体として、より柔軟で競争力のあるサービスが求められるようになります。
――今回の調査で特に強調しておきたいことがありますか。
担当者 今回調査で注目すべき点として、格安スマホ各社がARPU(1ユーザー当たりの平均収益)の向上を目指した取り組みの中で、「日本通信SIM」の高い満足度が際立っていることです。
今後の業界の動向を左右するポイントとして、価格だけではなく、顧客満足度を向上させるための柔軟な対応やサービスの進化が挙げられるでしょう。顧客の声を反映させ、利用者目線でのサービス改良が今後の格安スマホ業界の競争で大きなカギを握ります。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)