「いつまでに」という期限設けず
「桜ライン311」は2012年5月に法人格を、14年5月に認定法人格を取得した。1万7000本の桜を植えるという一大プロジェクトを達成するには、「仕事」として取り組む必要性を感じたからだ。今日ではフルタイムのスタッフ7人、パート4人で運営する。岡本さんは現在、代表理事を務めている。
10年以上続くプロジェクトだが、寄付や助成金で活動資金を賄えており、植樹の希望者も絶えない。半面、岡本さんが難しさを感じるのは「場所の確保」だ。津波最大到達地点を探し、その場所の地権者と交渉して許可を得て初めて、桜を植えられる。地点を結ぶと総距離170キロ。1万7000本の目標のうち、2024年12月までに植えた本数は2324本だ。
ただ岡本さんは、「いつまでに」という期限は設けていない。ゴールは津波の教訓を、わかりやすく後世に残すことであり、桜は手段。地権者や住民の共感を得られなければ、意味がない。
復興が進む一方で、津波被害を示す痕跡はほとんど消えてしまった。そこで地元の人たちが、「震災を伝えていかなければ」とのムードが高まれば、おのずと桜ライン311のプロジェクトへの理解は進むはずだ。
「伝承は、一時がんばったから達成できるものではありません。大事なのは、歩み続けることです」
岡本さんは、息の長い活動の先を見据えている。