スマートフォン内蔵のカメラの進化が著しい。
ここ最近では4000万画素、5000万画素に留まらず、なんと2億画素対応カメラを搭載したスマホも登場している。「この2億画素という数字は本当か?」と疑う前に、そもそも「単純に画素数を増やしたら画質が向上するのか?」という点を考えるべきではないか。
スマホのカメラは、果たしてデジタルカメラを凌駕するのか? デジカメは、もはや無用の長物になりかけているのか?
ほとんど「コンデジ」のようなスマホ
2025年3月2日、中国のスマホメーカーXiaomiは最新フラッグシップモデル『Xiaomi 15』と『Xiaomi 15 Ultra』の国際展開を発表した。これは日本でも近々発売される見込みだ。
そのうちのひとつ、4.3倍望遠カメラの画素数は堂々の2億。「プロのフォトグラファー向けのハイエン今回は、Xiaomi 15 Ultraのカメラに話を絞りたい。この製品の背面には4種類のカメラが搭載されている。ドスマホ」という文言でこの製品を紹介するテクノロジーメディアも存在する。
Xiaomi 15 Ultraは、その見た目からして、コンデジのような設計だ。まさに「写真を撮影するのが第1目的のカメラ」で、フォトグラファーのサブ機として活躍するかもしれないポテンシャルを秘めていることは確か。
が、同時にスマホカメラが中価格帯以上のデジカメを完全に超える日はまだ訪れないとも感じる。
デジカメの画質を決める根本要因は、画素数よりもイメージセンサーのサイズだからだ。
「画面の小ささ」による画質低下
デジカメが実用的な製品として確立される前のフィルムカメラでも、写真1コマあたりのフィルムの大きさに余裕があれば、その分だけ画質がよくなることは言われていた。いや、実際にそうだった。
たとえば、かつてコダックが開発した『ディスクカメラ』。これは円盤型のフィルムを差し込んで使うタイプのコンパクトカメラで、「フィルムの巻き上げ」という概念もなく、レリーズボタンを押せば矢継ぎ早に撮影できるというものだ。
これが登場した当初はボディのスリムさ、軽量さに誰しもが驚いた。が、実際に撮影してみると、画質がよくなかった。写真1コマあたりのフィルムが非常に小さいためだ。
たとえ話で説明しよう。狭いグラウンドに100人の子供を押し込んでも、彼らは自由に走り回ったりサッカーをしたりすることはできないだろう。ならば、広いグラウンドを用意して、子供たちを入れてあげよう。こうすれば、狭いグラウンドにいた時よりも、いろいろな運動ができるはず。ただし、広いグラウンドを使うは賃料が高額になるものだ。
大雑把なたとえではあるが、デジカメのセンサーもそれと似ている。
フォトグラファーの「二分化」が進むか?
現在市場投入されているフルサイズ(35mm)センサーのデジカメの画素数は、概ね2200万画素から3000万画素といったところか。多いものでは6000万画素というのもあるが、それでも上述のXiaomi 15 Ultraには遠く及ばない。
しかし、センサーの大きいデジカメで撮った写真は、階層表現に優れている。色のグラデーションがきめ細かく、結果として恐るべき立体感を持った写真に仕上がるのだ。
それまでは専らスマホで写真撮影をしていた人が、高級コンデジやデジタル一眼レフカメラを所有して「人生が変わった」とまで口にするのは、スマホカメラでは絶対に撮影できない立体感に圧倒されたためである。
以上の理由から、センサーの大型化が難しいスマホカメラが「本職」のデジカメを完全に追い越す日はまだ少し遠いかもしれない。
とはいえ、「難しい」は「不可能」ということではないのも事実。Xiaomi 15 Ultraの4.3倍超望遠カメラが採用しているセンサーのサイズは、スマホカメラにとってはギリギリ一杯とも言える大型の1/1.4インチ。これならば、家電量販店で安売りされているような低価格帯のデジカメよりも遥かに高いパフォーマンスを期待できる。ちなみに、Xiaomi 15 Ultraのカメラを監修・共同開発したのはあのライカである。
そのうえで、現在のフラッグシップモデルのスマホは、オンデバイスでのAI処理を可能とするようになった。AIの力を借りて、たとえば撮影した直後の画像の階層表現をよりダイナミックな具合に自動加工する......ということは既に行われている。ピンボケ修正や不要な写り込みをピンポイントで消す機能も用意されている。
となると、今後、フォトグラファーと呼ばれる人は「AIの処理能力を重視する人(スマホカメラ派)」と「AIの力を借りずに、大型センサーと光学レンズが実現するパフォーマンスにこだわる人(デジカメ派)」に二分化されていくかもしれない。(澤田真一)