トー横キッズという言葉を知らない人は、もういないと思う。
歌舞伎町にある映画館の横道を溜まり場とする若者たちのことで、コロナ禍を中心にトー横の輪は大きく広がった。一時期は全国各地から繁華街に子どもが集まり、街中をうろついていたという。
現在は映画館の傍も、界隈で「広場」と親しまれた空きスペースも立ち入りが禁じられ、"キッズ"が集まれる面積が全体的に狭まった。若者の間で巻き起こったブームは、少し落ち着いたのだろう。
「現実から逃げたい」と繁華街にたどり着く
地べたに座り、談笑する少年少女を見ると「友達の家や近所で遊べばいいのに」と多くの大人は批判する。たしかに、若くして夜の街に抵抗なく立ち入るさまを肯定してはならないのだが、家庭の問題で家にいられない子、いじめに遭って地元で身動きが取れない子など、彼らにもそれぞれ事情があるのだ。
ワケありの子どもたちは身近なところで満足ができる環境ではないため、知らない世界への憧れを抱いてしまう。「ここではないどこかへ行きたい」「現実から逃げたい」という気持ちが強いほど非日常を求め彷徨った結果、行きつくところが派手な繁華街なのだ。
近所の目も気にせず、口うるさい大人も、自分を虐げるクラスメイトもいない。事情を抱えた人間からすると、似たような傷を背負った同世代と遊べば、辛さが一瞬でも薄れる。たとえ交流の場が、ダークな街だったとしても......。
世間ではトー横に足を踏み入れる子どもばかりが非難されるが、一番責めるべきは大人が作り出した闇だと私は考える。未来が見えづらい現代社会に、冷え切った家庭、トラブルを取り合わない学校など、闇を挙げたらキリがない。