宿泊客に頼まれて、薬を渡したホテルがあった――あるホテル関係者が、こんな話題をXで切り出し、関心を集めている。
風邪薬などを忘れてきたとすれば、親切なサービスにも聞こえるが...。
「薬くださいってめちゃくちゃ多い」とする関係者も
宿泊中に体調が悪くなってしまい、もしや風邪ではと思い、ホテルなどに常備薬があるか聞きたくなった。こんな体験がある人もいるかもしれない。
ホテル関係者を名乗るアカウントが2025年3月8日、宿泊客に頼まれてホテルが薬を渡したエピソードをXで投稿すると、反響が広がった。
同業者からは、「あるんでしょ?とは聞かれます」「薬くださいってめちゃくちゃ多い」とリプライが寄せられ、ホテルなどでは、日常的に見られる客の要望らしい。
ただ、ネット上で検索すると、フロントで薬は渡せないとお知らせしている宿泊施設がほとんどだ。
理由は、医薬品医療機器法(薬機法)の第24条に抵触することを挙げている。条文では、薬局や許可を受けた人でなければ、医薬品を販売したり、授与したりしてはいけないとある。その目的で貯蔵したり、陳列・配置したりすることも禁じている。
各施設のお知らせでは、ばんそうこうなどはあるが、風邪薬や胃腸薬などは家から持参するか、薬局などを紹介するので購入してほしいなどと書いてあった。
ホテルなどに聞いたとするリプライでも、「フロント等で薬の提供はしてくださらないですよね」「具合が悪くなった時もドラッグストアを紹介されました」といった体験談が投稿されていた。
国内の主要なホテルが加盟する日本ホテル協会では10日、J-CASTニュースの取材に対し、フロントの対応についてこう話した。
「日常的に客に薬を渡す対応は認められていません」
「昔は、徹底されていませんでしたので、フロントで薬を渡したという話は聞いたことがあります。しかし、今はそのような対応はしていません。風邪薬などはコンビニでも取り扱いしていますので、ホテルが把握していて、お客様にご案内していると思います。各ホテルでは、医薬品ではないばんそうこうなどをフロントで用意したり、浴場では綿棒を備え付けたりはしています」
客に薬を求められたときのホテルなどの対応について、厚生労働省の医薬食品局総務課は3月10日、取材にこう話した。
「薬機法の第24条から、ホテルとして、日常的に客に薬を渡す対応は認められていません。一般的には、薬は授与できませんが、薬をあげないと倒れてしまう場合もあると思います。ケースバイケースで、緊急対応なら直ちに違反にはならないでしょう」
客に薬を渡せない理由としては、薬剤師が患者から話を聞き、情報提供してから医薬品を取り扱わなければならないからだと説明した。以前の旧薬事法でも、この条項はそのままあったという。
ばんそうこうなどは、許可がいらないので、渡しても差し支えないとした。ただ、湿布については、医薬品になる可能性があり、その場合は、許可が必要だという。
もしホテルなどが薬機法に違反した場合は、保健所などが指導することになるとした。各自治体の指導例については、厚労省では把握していないとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)