自由民主党所属の元衆院議員・杉田水脈氏が2025年3月9日、YouTube動画を公開し、夏の参院選比例代表での公認候補に決まったことについて報告した。
同じ問題で24年の衆院選は断念
杉田氏は自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件で、計1564万円の不記載があったとして、党役職停止6か月の処分を受けた。
17年・21年の衆院選で比例中国ブロック単独候補となっていた杉田氏。自民党山口県連は、24年10月に行われた衆院選でも比例中国ブロック単独候補として杉田氏の擁立を目指し党本部に公認申請を行ったが、その後断念。杉田氏は記者会見を開き、25年の参院選に立候補する意向を表明していた。
自民党は8日までに、杉田氏について夏の参院選比例代表での公認候補とすることを発表していた。
杉田氏をめぐっては、裏金問題以外にもアイヌ民族や在日コリアンに対する差別的な言動についても批判の声が上がっていた。
杉田氏は16年にスイスで行われた国連女性差別撤廃委員会に参加した女性に向け「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」などとブログで批判していた。投稿はのちに削除し、謝罪している。
杉田氏「どれだけ票が取れるのかっていうことを色々審査した結果」
3月9日公開の動画では、「『杉田水脈のなでしこ復活』をご覧の皆様! 杉田水脈でございます。そして、やっと出ました。自民党の公認をいただくことができました」と笑顔で報告した。
自身が公認を得た理由については、「今回夏の参議院選挙、自民党の方はなかなか厳しい状況が続いているというのが予想されますのでね。個人が、特に全国比例は『どれだけ票が取れるのか』っていうことを色々審査した結果、公認をいただけたということになったという風に聞いております」と説明。
「実際にはですね、杉田水脈には大きな団体とかそういったものは一切ついていません」といい、「応援してくださるお1人お1人の皆さんの力を信じて戦うしかないなと思っております」とした。
「とにかくやっとスターラインに着くことができました」としつつ、「でも本当に始まったばっかりということですのでね。7月の決戦に向けてしっかり頑張っていきたい」と決意を述べた。
杉田氏はXで、自身の差別的な言動に関して「『人権侵犯』と認定」されたとのTBSラジオニュースの投稿を引用し、釈明を行った。
問題とされた言動については「『啓発を行ったほか、措置は猶予することとした』と、通知文には書いてあります」といい、「当時、報道を受けて事務所もそう回答したが、法務省の方に聞くと『これは『認定していない』という意味です。『認定した』とする報道は間違いです』と、教えていただきました」と主張している。
野党「人権感覚も歴史認識も、これが自民党」
終始笑顔で比例での公認復活を報告した杉田氏だが、野党からは自民党の対応をめぐる疑問の声も少なくない。
共産党の山添拓参院議員は、「自民党が参院比例候補として公認した杉田水脈氏。アイヌや在日コリアンへの差別発言は法務局が『人権侵犯』と認定、女性や性的マイノリティへの差別発言も繰り返してきたが、公認に当たっては執行部から問われることすらなかったという。人権感覚も歴史認識も、これが自民党」と疑問をつづった。
立憲民主党の杉尾秀哉参院議員は、「杉田水脈氏の公認理由を石破総裁に質さなければならない。言い訳は許さない」とコメント。
石破氏が壇上の杉田氏に拍手を送っている様子を写した写真を引用し、「石破総理が自民党大会の参院選候補者紹介で登壇した杉田水脈氏に拍手を送っているという事は、総理は過去の杉田氏の言動や裏金問題での対応を容認した上で公認したという事ですね」としている。
立憲民主党の小沢一郎衆院議員は、杉田氏の公認を伝える報道を引用し「言葉も無い」と言外に断じた。
立憲民主党の有田芳生衆院議員は、杉田氏の公認をめぐる批判的なポストを複数RT(拡散)した上で、杉田氏が今後当選した場合、党の指示があれば国会の政治倫理審査会で弁明する考えがあるとした報道を引用し「職業的差別主義者を候補者にする自民党に人権意識はありません」などとつづっている。