1980年代に話題となったデートカーとは何ですか?
デートカーとは文字通り若者がデートを楽しむクルマで、1980年代から90年代にかけてヒットした日産シルビアとホンダプレリュードが双璧だろう。いずれも2ドアクーペで、スポーツカーとは少し異なり、スペシャリティーカーと呼ばれた。
この時代の日本のスポーツカーには、日産フェアレディZ、マツダRX-7、トヨタMR-2などがあった。こちらは純粋なスポーツクーペで「走り」を重視しており、デートカーとは、あまり呼ばれなかった。
当時、若者に人気だったトヨタのハチロク(カローラレビン、スプリンタートレノの愛称)もスポーツカーに近く、デートカーとは一線を画す硬派のクルマだった。
スポーツカーほど高性能ではないが
これに対して、シルビアやプレリュードはスポーツカーほどの高性能ではないが、スタイリッシュかつエレガントで、二人でデートを楽しむにはうってつけだった。価格的にも、若者がローンを組めば、なんとか購入できる金額だった。
スペシャリティーカーの上級車種としては、トヨタソアラ、日産レパードなどがあったが、若者には高価すぎ、もっと齢を重ねたミドルが乗るクルマだった。
現在、デートカーという言葉は死語になっているが、イマドキの若者は、どのようなクルマでデートを楽しむのだろうか。
ホンダ車の純正アクセサリーを発売するホンダアクセスが2024年1月に行ったZ世代とX世代のドライバー1000人に聞いたインターネット調査によると、「ドライブデートで運転したいクルマ」「助手席に乗りたいクルマ」の1位は、いずれもSUVだった。
Z世代の「運転したいクルマ」の2位は軽自動車、3位がセダン、「助手席に乗りたいクルマ」の2位はセダン、3位はスポーツカーだった。
Z世代とは1996年~2005年生まれ、X世代とは1960年~1979年生まれの人を指す。
かつてのデートカーに近いロードスター
この調査を受け、ベストカーWebは、300万円以下で購入できる国産5モデルを「現代のデートカー5選」として紹介している。
その5台とは、SUVからホンダWR-Vとスバルクロストレック、スポーツカーからマツダロードスター、軽自動車から三菱デリカミニ、セダンからトヨタカローラだ。異色の組み合わせだが、いずれも300万円以下で、若者に手が届きやすいクルマとなっている。
このうち、2シーターのクーペはマツダロードスターだけだ。この5台の中で、かつてのデートカーに最も近いのは、ロードスターだろう。5選には選ばれなかったが、トヨタGR86とスバルBRZもロードスターと並び、現代のデートカーにはぴったりだろう。
SUVは年齢を問わず世界的に人気が高い。かつてのスペシャリティーカー的なムードを今の若者はホンダWR-VやスバルクロストレックのようなSUVに感じるのかもしれない。
スバルクロストレック、デリカミニはどうですか?
スバルクロストレックはステーションワゴンとSUVの中間に位置するクロスオーバーSUVだ。三菱デリカミニも単なる軽ワゴンではなく、SUV的な雰囲気が若者には魅力的なのだろう。デリカミニは183万円台からと、5選の中では最も手が届きやすい。
カローラが現代のデートカーとは、ちょっと理解に苦しむが、カローラにもカローラクロスのようなクロスオーバーSUVが存在する。カローラスポーツやGRカローラなどバリエーションが豊富なのもカローラの特徴で、もはやオジサングルマとは言い切れないのかもしれない。カローラクロスは290万円からと、リーズナブルなのも若者には魅力だろう。
いずれにしても、現在はSUV絶頂の時代だ。シルビアやプレリュードに匹敵するクルマがない以上、今の若者が選ぶデートカーは必然的にカッコいいSUVになるのだろう。ホンダは年内にもプレリュードを復活させるが、Z世代の若者は反応するだろうか。プレリュードの復活を待ち望むのは、80~90年代に青春を過ごしたかつてのデートカー世代だけかもしれない。
(ジャーナリスト 岩城諒)