小包を届けに来た郵便配達員と「すっぴんを見られたくない」とドアをなかなか開けない女性客を俳優らが演じたコント風動画に対し、一部で批判が起き、日本郵政(東京都千代田区)は、投稿した動画を削除した。
「女性をバカにしている」という声があったが、「言いがかりなのでは?」と異論も出て、意見は割れている。同社は、「様々なご意見をいただき、真摯に受け止めた」と公式Xで説明した。
「絶対見ませんので」男性配達員は女性客に説明するが...
「郵便です~!」。男性配達員が玄関で声をかけるが、女性客は、顔が見えないようにドアを少しだけ開けている。
「すみません、ちょっと見られたくないんで」
女性が説明すると、配達員は「あっ」と声を上げるが、ドアは閉められてしまう。女性は、またドアを少し開けたが、今度は、右手に持ったマジックハンドを小包の方に差し出す。何度もつかもうとすると、配達員は、「あの、印鑑かサインお願いできますでしょうか?」と女性に尋ねる。そして、少しのぞこうとすると、女性は、顔をしかめて「あたし今、すっぴんで見られたくないんですよ」とやっと理由を明かした。
「もうちょっと下がってもらってもいいですか?」。女性の依頼に、配達員は戸惑うが、床に置くように言われて、小包を下に置いた。女性は、「あの、体を壁向きにしてもらって」と注文を出し、配達員が従うが、女性はなおも半信半疑だ。
「いーや、もう信じられない」「絶対見ませんので」...
こんな応酬が続いた後、女性は、「う~ん、どうしよっか」とつぶやいて、今度は、手鏡を出して配達員を見た。
「そこから絶対に何があっても見ないで下さいね」「まあ、分かりました」
女性がしゃがんで小包を取り、名前を書く場所を聞いて、配達員が振り向くと、「あ、ウソつき!」とドアをまた閉めてしまった。配達員がドアを叩き、サインとボールペンを求めると、女性は、マジックハンドでこれらを出す。女性がドアを閉めて、配達員が「ありがとうございました」とお礼を言うところで動画が終わっている。
「女性蔑視がひどすぎる」「コメディ風に描いただけ」
この2分強の動画は、「絶対にすっぴんを見られたくない女VSなんとかサインをもらわなければいけない配達員」と題して、日本郵政の公式Xで3月5日に投稿された。
動画は、ウェブ広告を手がけるIT企業「合同会社こねこフィルム」(東京都町田市)とコラボして、日本郵政が24年10月からTikTok上で始めた「こやぎフィルム」プロジェクトの一環だ。
プレスリリースによると、手紙や郵便などにまつわる人間ドラマを描いた動画を週に1回、約半年間に渡って投稿していく予定。手紙や郵便をはじめとした郵便局ネットワークをより身近に感じてもらうのが狙いという。ユーモアと皮肉を織り交ぜた作風で「気が付くと再生ボタンを押す手が止まらなくなる中毒性ある作品」とアピールしていた。
今回の動画については、ネット上で賛否両論の意見が書き込まれている。
「女性蔑視がひどすぎる」「理解不能で戸惑うばかり」「ご時世的によく出せたな」といった批判の声が上がる一方、「やり取りをコメディ風に描いただけ」「いちいちクレーム入れるなんて」「コントなんて何もできんくなる」と反論も出て、議論になっている。
日本郵政の公式Xは25年3月6日、「弊社Xアカウントで投稿した動画に関して様々なご意見をいただきました」と報告したうえで、次のように説明した。
「それらを真摯に受け止め、当該動画を削除いたしました。今後は細心の注意を払い、再発防止に取り組んでまいります」
同社の広報部は7日、J-CASTニュースの取材に対し、投稿を削除したのは今回賛否が割れた動画だと明らかにした。どんな意図で動画を作ったのか、意見をどう受け止めたのか、などについても質問しており、回答が来次第追って伝える。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)