1on1がたまに行われる「イベント化」している
J‐CASTニュースBiz編集部は、報告をまとめたパーソル総合研究所研究員の児島功和さんに話を聞いた
――1on1ミーティングの実施率が、直近半年で半数超、一度も経験していない部下が2割弱という結果、担当研究員としてズバリどう評価しますか。広がっていると言えるのでしょうか。
児島功和さん 1on1はある程度広がっていると感じます。しかし、実施頻度平均の低さ(ひと月あたり0.8回)を見ると、部下が日頃の仕事の振り返りに活用するには難しいように思います。
たとえば、1on1普及の火付け役といえるヤフーの1on1は、原則として週1回30分程度です(出所:本間浩輔『ヤフーの1on1』2017年)。1on1がたまに行われる「イベント化」しているような気がします。
――1on1の課題として、上司と部下ともに「面談の効果が感じられない」とする人が3割近くいます。なぜ、面談の効果が感じられないのでしょうか。
児島功和さん まず、上司の問題点ですが、調査結果から、上司の日頃の部下に対するマネジメント行動の重要性がわかっています。日頃から部下の意見を尊重し、仕事の進捗を確認し、部下を励ます。また、部下が一人では気づかない視点からの助言をしていること、などです。
部下からすれば、自分を尊重し、励まし、新しい視点から助言をしてくれる上司だからこそ信頼することができ、1on1時の上司の率直な言葉も自分の成長の糧とすることができるのだと思います。
つまり、上司がそれらのマネジメント行動をできていないことが問題なのではないでしょうか。また、1on1を「部下のための時間」と捉えていないこともあるかもしれません。1on1を部下の成長に結びつけたいのであれば、部下が主役なのに、1on1の時間中上司が一方的に話したり、何を話すかも上司が決めていたりすれば、それは「上司のための時間」になってしまいます。
――なるほど。では、部下の問題点は何でしょうか。
児島功和さん 調査結果から、部下は1on1について学ぶ仕組みがないことに困っていることがわかっています。傾聴やコーチングといった1on1に関連する研修を受講している部下は、そうではない部下よりも1on1を通じた成長度が高く、1on1に関するマニュアルや本を読んでいる部下は、そうではない部下よりも成長度が高いことがわかっています。
部下の問題点とは、まず1on1を活用するために必要なことを学んでいないことにあると思います。1on1は上司と部下の相互作用です。上司がいくら頑張っても、上司のメッセージを受け止める側の部下に上司の発言の意味を活かせる知識やスキルがなければ、上司の発言は「スルー」されてしまいます。