近年、部下の成長支援を目的とした1on1ミーティング(上司と部下の定期面談)の導入が、多くの企業で進んでいる。
しかし、課題も浮き彫りになっている。上司からは「忙しいのに時間がとられる」、部下からも「何を相談すればよいのか、思い当たらない」といった意見などだ。
「部下の成長」という目的を果たすにはどうすればよいのか。1on1ミーティングの調査をまとめたパーソル総合研究所の児島功和さんに話を聞いた。
上司・部下ともに「相手のほうがよく話す」と感じている
パーソル総合研究所研究員の児島功和さんが2025年2月27日に発表したのは「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」という報告だ。
1on1ミーティングは、部下の成長支援や信頼関係構築の手法として2010年代後半から急速に普及している。
報告によると、1on1を直近半年で経験した部下の割合は55.7%で、一定程度の広がりがみられる。ただ、一度も経験したことのない部下が17.5%おり、実施頻度の平均は、ひと月あたり0.8回だった。
興味深いのは、1on1時に上司は自分より部下が多く話していると感じている人が多い一方、部下は自分より上司が多く話していると感じている人のほうが多いことだ【図表1】。そして、1on1時に上司より部下の話す割合が高く、部下がその日に話すテーマを決めているほど、部下の成長度も高かった。
1on1に関する課題を聞くと、上司・部下ともに「面談の効果が感じられない」と「面談について学ぶ仕組みがない」が約3割と、上位に並んだ【図表2】。
1on1を効果的に改善するにはどうしたらよいか。上司の約7割、部下の半数以上が「『人材育成』を重視する組織風土をつくる」ことをトップにあげた【図表3】。
調査結果では、1on1時に部下の成長に最もプラスの影響を与えていた上司の3つの姿勢が明らかになった。
それは、「本音を話してくれる上司」「部下に配慮して、励ましの言葉をくれる上司」、そして「自分でも気がつかない、新たな視点をくれる上司」である【図表4】。