プロボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋、31)への挑戦が内定していたWBC同級1位アラン・ピカソ(メキシコ、24)が、井上との対戦を回避した。複数の海外メディアが2025年3月4日までに報じた。
「指名挑戦者が世界タイトル戦を回避することは考えられない」
WBCの指名挑戦者であるピカソは当初、5月に米国で井上に挑戦する予定だった。ところが、複数の海外メディアによると、ここにきて自身の陣営から井上戦を反対する声が上がり、井上戦を辞退する方向だという。
世界ランキング1位の指名挑戦者による「対戦回避」。世界タイトル戦出場の権利を持ちながらも、なぜ辞退するのか。J-CAST編集部は、数多くの世界戦をプロモートした経験を持つTMKジムの金平桂一郎会長(59)に、陣営の策略、思惑などについて聞いた。
金平会長は「指名挑戦者が世界タイトル戦を回避することは、ちょっと考えられません」と前置きした上で、次のように持論を展開した。
「ピカソ選手はWBCの指名挑戦者でした。指名挑戦者というのはひとつの権利。世界王座に挑戦するためにずっとやってきて、世界戦をやりたいという旨を話していたから、おそらく対戦の方向で進んでいったと思います。ただ、報道されているように、ピカソ選手の周りが『対戦をやめた方がいいよ』と言ったので対戦をやめるというのだったら、最初からそんな話をしなければよい」
次戦はWBA同級2位ラモン・カルデナスが候補に
金平会長は、世界王座の認定団体であるWBCにも言及。WBCは、世界主要4団体(WBA、WBC、WBO、IBF)のひとつとして認定され、その歴史はWBAの次に古い。
プロモーターとしてWBCと深い関わりを持つ金平会長は、今回のピカソの「対戦回避」の件について、WBCに対して、こう提言した。
「認定団体のWBCは、世界戦をやる気のない人間の世界ランキングを下位に落とすべき。ピカソ陣営が、井上選手が階級をフェザー級に上げた場合、『自分たちがスーパーバンタム級の最優先の挑戦者になる』ということを考えているとしたら本末転倒。指名挑戦者として役割を果たさないのであれば、世界ランキングから大きく落とすということをしないとだめだと思います」
そして、次のように続けた。
「WBCは、それなりの選手を1位に上げるなどの対策をするべき。このような前例を作るのはよくない。今、井上選手と対戦するのは得策ではないからパスして、自分の都合がよい王座決定戦になった時に、『俺が1位だから』はおかしい。筋が通らない」
海外ボクシング専門メディアの報道によると、井上の次期防衛戦は、5月5日(日本時間)に米ラスベガスで予定されており、対戦相手はピカソの代替としてWBA同級2位ラモン・カルデナス(米国、29)が候補に挙がっている。