外国人の迷惑系配信者グループに対し、フェリー会社の要請で、英語ができる鹿児島海上保安部の保安官らが乗船拒否を伝えた様子が映った動画がX上で拡散し、その対応に賞賛が集まっている。
このグループは、新幹線の車内で騒いだり、フェリーの禁煙客室でタバコを吸ったりする場面を自ら配信し、批判が相次いでいた。こうした被害に遭った別のフェリー会社も、「厳正な対応を行う予定です」と取材に明らかにした。
配信者ら「視聴者がウソの電話を」反論したが...
「海上保安庁です」。鹿児島発那覇行のフェリー「クイーンコーラル」で2025年2月26日夕、米国人とされる帽子を被った男に、鹿児島海保の保安官が英語でこう告げ、「残念ながら、チケットを購入されていても、本日の乗船はできません」と乗船拒否を伝えた。
保安官は、フェリーの運航会社マリックスライン(鹿児島市)が乗船を拒否すると決定したと説明し、男が英語で「なぜ?」と尋ねると、保安官は、新幹線などでの多くの迷惑行為を運航会社が確認したからだと答えた。別の男が「視聴者がウソの電話をしてくる」と反論したが、保安官は、「多くの方が迷惑行為を目撃している」と突っぱね、男らが「迷惑行為なんてしていない」と粘っても、認めなかった。
保安官は、運航会社がチケット代の返金はすると伝えると、男は、「ああ、それでいい」とあきらめた様子だ。船内で他にグループの9人がいるはずだと保安官が指摘し、全員を呼ぶように求めた。もう1人の男が「ユーチューブで見たって、勝ち目ないぞ」とつぶやいたが、男らは、「俺たちは、悪いことはしていない」と、なおも渋っていた。
この動画は、グループの1人が配信し、それがXで転載されて、拡散した。海保やフェリー会社の対応については、「よくやった!!」「連携プレーお見事」といった賞賛の声が相次いでいる。
フェリー会社の乗船拒否で海保が出動した背景には、このグループが来日してから、数々の迷惑行為をして配信し、その活動が問題視されたことがある。
23日には、グループが大阪発別府着の別のフェリー「さんふらわあ」に乗船し、禁煙客室内で同日夜、少なくとも3人がタバコを吸ってその様子を動画配信していた。日本のネット上で騒ぎになり、フェリーの各運航会社には、厳しい対応を求める通報が相次いでいた。
禁煙客室での喫煙など複数の迷惑行為を確認
保安官が出動したことについて、鹿児島海保の管理課は3月3日、乗船客などが船内の秩序を著しく乱す場合などは船長が行政庁に援助を請求できるとした船員法第29条の規定に基づき、マリックスラインが相談に来たと、J-CASTニュースの取材に説明した。
保安官は、援助のため、動画配信グループとの間に入ったという。このグループについては、マリックスラインが、さんふらわあ禁煙客室での喫煙などいくつか迷惑行為を調べ、船長が乗船させれば危険だと判断したとした。グループは、拒否された結果、乗船しなかった。船員法第29条に基づき、船長を援助したケースは管内で初めてだという。
乗船拒否について、マリックスラインの鹿児島営業部は3日、「他の乗船者の迷惑となるおそれのある者」は乗船拒否できるとした同社の標準運送約款の第3条の2に基づいたと取材に説明した。
このグループは、新幹線の車内で大騒ぎしても車掌の再三の注意を受け入れずに途中駅で下車させられた、他社のフェリーでの予約名も同じで禁煙客室でタバコを吸うなどの迷惑行為を事実確認できた、といったことから乗船拒否を決めたとしている。
グループに対して当初、窓口で乗船拒否の対応をしようとしたが、バラバラに来てチケットを購入したため、警備に来た鹿児島海保と相談し、英語が堪能な保安官に対応を任せたという。
グループは、13人で予約していたが、実際には、10人が乗船の手続きをした。うち1人にはターミナル内で乗船拒否を伝え、9人はすでに乗船していたといい、計10人は、チケット代の返金を受けて那覇に向かわず船を降りたという。
禁煙客室でタバコを吸う行為は、グループが利用したさんふらわあの公式サイトによると、確認されれば、海上運送法違反で30万円以下の罰金が科せられるほか、特別清掃料5万円を請求し、今後の乗船を一切断るとしている。同法の第23条の2では、「船舶の旅客の安全を害するおそれのある行為」を禁じている。
このフェリーを運航する商船三井さんふらわあ(東京都千代田区)の旅客営業2部は、こうした行為を把握していると取材に答えたうえで、喫煙禁止場所で喫煙するといった旅客の禁止行為などを定めた同社の標準運送約款の第18条に該当すると判断したとし、「国内法及び運送約款に基づいて、厳正な対応を行う予定です。対応の詳細については、回答を差し控えさせて下さい」と述べた。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)