「全てが危険とは思わない」が...売り上げ重視?一人二役はびこる
水谷氏いわく、本来、全身麻酔は安全を十分に担保した状態で初めて意識を無くす、というものだ。薬で呼吸が浅くなる、「舌根沈下」で気道がふさがりうるといった麻酔の特徴を予め想定して空気の通り道を確保しておく必要がある。代表的な方法では、初めに口や鼻からチューブを通す「気管内挿管」をして、呼吸器を用いながら、手術中も生体情報モニターで呼吸や血圧、酸素の状態に異常がないか確認・対応する。
水谷氏によると「医師なら出来て当たり前」だが、「安全な麻酔をかけ続けるのは絶対に麻酔科医の方が間違いない」。専門の医師に頼らず「一人二役」、つまり全身麻酔を自分でかけながら同時に外科手術に臨むと注意力が散漫になり、管理不十分になりうると指摘した。
一方、医師間で情報交換していると一人二役のクリニックが意外に多く、軽めな薬に関しては麻酔科医を入れず行うことが一般的とのこと。
そもそも麻酔科医は仕事量などから常駐先が総合病院や大学病院に偏っている状況だという。ただしフリーランスは多く、現状、クリニック側が全身麻酔の時だけ麻酔科医を手配することは出来るはず。それにもかかわらず麻酔科医を手配せずに全身麻酔を行うクリニックが散見される大きな原因は「簡潔に言えば売り上げ重視だからではないか」とした。
水谷氏は「全てが危険とは思わない、十分に注意してやっている先生が圧倒的に多い」「麻酔科医がいない=悪ではない」としつつ、一部医師によって「気の毒な患者さんが生まれているようだ」と見立てている。