「テレワーク5周年」でオフィスに出社しない人たち 「効率も満足度も過去最高」という調査結果も

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   新型コロナウイルスの感染拡大が社会問題化して、丸5年。テレワークが一般化し、オフィスに行かなくなった会社員も少なくない。通勤が不要、会社もオフィスを削減できるなどメリットは多いはず――。

   しかし、実際にはテレワークの実施状況は縮小傾向にあるようだ。ある調査によると、現在テレワークをしていると答えた人が、2020年5月の調査開始以来最低の14.6%となった。従業員1000人超の企業でも50.0%から25.6%へと半分近く、同100人以下では31.5%から9.7%と初の一桁まで落ち込んでいる。

  • テレワークはいいか?悪いか?(写真はイメージ)
    テレワークはいいか?悪いか?(写真はイメージ)
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午前7時に起床し午前8時から勤務

   この調査は、日本生産性本部の「第16回 働く人の意識調査」。20歳以上の日本の企業・団体に雇用されている1100人から回答を得た。調査期間は、2025年の1月初旬だ。

   自宅勤務制度を「利用できない」と答えた人は59.3%。「以前から職場に制度がない」と答えた人のほかに、「制度がなくなった・利用できなくなった」「制度はあるが自分は利用できない」という人もいた。

   一方で、自宅勤務を行っている人に「自宅での勤務に満足しているか」と尋ねたところ、88.0%が「満足している」「どちらかというと満足している」と答え、調査開始以来最高水準となっている。

   自宅での勤務によって仕事の効率が上がったか、との問いにも「効率が上がった」「やや上がった」と答えた人が73.7%に。過去最高を記録した前回(2024年7月)の78.9%から微減はしているが、こちらも高い水準にある。

   都内のIT企業に勤めるAさんは、2020年の2月17日から始めた自宅勤務が6年目を迎えている。毎朝午前7時に起床し、午前8時から午後5時まで勤務。家事などを行った後に残業をすることはあるが、午後8時までには仕事を終えている。

   この5年の間に、会社は都心のきれいなオフィスビルに引っ越しを行ったが、Aさんは2回しか出社したことがない。

「一度目は移転祝いのパーティで、二度目もコロナ空けの交流イベントですから、仕事をしに行ったことはないですね。オフィスはとてもきれいになりましたが、全社員が一度に出社しても座る席がありません。最近、新卒入社が増えてフロアを広くしたのですが、中堅以上はもう出社することはないでしょうね」

自宅は「最も集中して作業できる場所」

   調査結果で、自宅勤務を行っている人の「満足度」や「効率化」が右肩上がりになっていることについて、自宅勤務組にそのような働き方のペースが定着したからだろうと推測する。

「自宅勤務はサボる人がいるとか、生活のペースが乱れるとかいう意見もありますが、申し訳ないですけどそういう人は、この5年で淘汰されてしまったのではないでしょうか。実際、孤独感を募らせて退職した独身者もいたのですが、残っている人たちは自宅でかなり集中して仕事をしていると思いますよ」

   例えば出社すれば、会議室に移動する時間も必要だったが、自宅であれば席についたままビデオ会議を次々とこなすことができる。

「出社していたころを思い出すと、同僚と仕事と関係ない話をしたり自販機にコーヒーを買いに行ったりと、けっこう遊びの時間がありましたよね。いまはビデオ会議が詰まっていると、ランチやトイレにすら行けない日もあります」

   自宅勤務の環境も「改善が二周目くらい」になっていて、モニターやウェブカメラ、ヘッドフォンはもちろん、イスも買い替えた。こうなると「出社の理由」がなくなってくる。

「まず、会社のオフィスは、自宅よりも『集中して作業できる場所』になっていない。設備もそうですし、電話がかかってこないとか、同僚が話しかけてこないとか。そう考えると、自宅の方が『集中できる場所』になり、出社によってかえって生産性が下がることになります」

   とはいえ、仕事には作業だけでなく、上司や同僚とのコミュニケーションも必要だ。この点についてもAさんは「仕事を成果で管理できない管理職が、意味もなく社員を出社させる口実でしかない」と冷ややかに見ている。

リラックスしてアイデアを出し合えるスペースもないオフィスなんて

「顔を突き合わせて仕事をするのは大事と言われて100%出社になった知人がいたのですが、聞いてみるとオフィスはただの大部屋なんですよ。会議室は少ないし、ちょっとした打ち合わせをするスペースもない。出社したって大して会話もせず、ただの島型デスク配置で上司が部下を眺めているだけ。意味ないですよね」

   Aさんは、例えばプロジェクターやホワイトボードがあり、座りやすいソファがあって、コーヒーでも飲みながらリラックスしてアイデアを出し合えるスペースがあるなら、定期的に出社する意味はあるかもしれない、と明かす。

   もっとも、新入社員をはじめとする若手社員は、先輩社員の横で仕事を見ながら覚えることもあるので、出社には意味があるという。給与が安いうちは、狭いワンルームマンションで業務環境を整えることは難しいだろう。

   ただし、自走できて、上司や同僚とリモートでコミュニケーションしながら仕事を進められる中堅以上になれば「社員でありながらフリーランスのような感覚で、自宅勤務をするのが当たり前になるのでは」というのがAさんの意見だ。

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