競争に弱く、ちょっとした仕事の失敗で落ち込んでしまう
――スマホやテレワークの影響もあるとはちょっと意外です。
金本麻里さん 3つ目は、ジェネレーションギャップです。近年教育環境の変化やテクノロジーの発展が、若者の価値観に影響を与えているという論があります。今回の調査でも、若手ほど怒られたり人と対立したりといった他者からの批判や、失敗を避けがちであることが確認されました。
これは、教育分野で競争を廃し、協調や多様性を重視するようになったことや、インターネットですぐに正解が分かるため、失敗や試行錯誤の機会が減ったことなどが理由として考えられます。
このような傾向が強い若手は、上司世代が受けてきたような「叱責」による指導によって、精神的に疲弊しやすいことがわかりました。
また、仕事の失敗をメンタル不調の原因にあげる人も20代で特に多いです。学生までは同質的な環境でしたが、社会に出ると価値観のズレがある上司世代と関わるようになり、メンタルヘルスの問題を生じやすくしている可能性があります。
――男性より女性にメンタル不調者が多いのはなぜでしょうか。たとえは適切ではないかもしれませんが、厚生労働省が発表している自殺の統計(2022年のデータ)によると、自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は男性(24.3人)が女性(11.1人)の約2.2倍。
この割合は毎年ほぼ同じだそうです。理由は諸説ありますが、一般的に男性は人に悩みを相談するのが苦手で1人で抱え込むのに対し、女性はよく友人に相談するからといわれます。
金本麻里さん 女性でメンタルヘルス不調者が多い点については、自殺率は男性のほうが高いですが、うつや不安障害の罹患率は女性のほうが高いことが知られています。特に女性が職場でストレスを多く抱えているという結果ではないので、女性一般の傾向だと解釈しています。