職場に相談しても解決しない、むしろ不利になるという誤解
J‐CASTニュースBiz編集部は、報告をまとめた金本麻里さんに話を聞いた。
――20代社員の5人に1人がメンタル面で不調を抱えているという結果が衝撃です。これほど若い世代に不調者が増えているのは、ズバリ何が理由でしょうか。
金本麻里さん 調査の結果、大きく3つの理由が考えられます。
1つ目は、職場のメンタル不調の早期発見・早期対応が、いまだに十分に実現されていないこと。ストレスチェックなど、早期発見のためのツールや相談体制は整いましたが、従業員の意識として、職場に相談するハードルはいまだに高いのが現状です。
理由としては、職場に相談した後どのような対応をされるのかを従業員がよくわかっていないという「情報共有不足」と、相談することで自身の評価・評判が低下するのではないかという「評価不安」があることです。
この2つは特に若手に多く、結果として若手のほうが職場に相談するハードルが高い傾向があります。これは、若手はメンタルヘルスの問題に偏見がなくオープンであるという先入観を裏切るものです。近年、法整備により職場の対応はかなりよくなり、今回の調査でも相談者の約8割が支援的対応を受けていました。上司への教育もなされており、メンタル不調者に公平な評価・昇進昇格機会を与えるとの上司が多数派です。
しかし、一般社員にその情報共有がされていないため、旧来の考え方(メンタル不調は職場に相談しても解決しない・相談した側が不利になるといった考え方)が根強いことが原因としてあると考えており、とてももったいない状況だと思っています。
――うーむ。必ずしも職場の対応が冷淡なわけでないのに残念ですね。2つ目はどういう理由ですか。
金本麻里さん 2つ目は、最近の若手は、スマホ利用時間(スクリーンタイム)が長く、テクノストレスにさらされていることです。スクリーンタイムの悪影響は広く知られているところで、眼精疲労や脳疲労だけでなく、自律神経を乱し、メンタル不調の一因にもなりえます。
また、一部で定着したテレワークも若手で特に孤独感をつのらせやすいことが分かっており、コミュニケーションの面で特に配慮が必要です。メンタル不調の直接の原因は仕事のプレッシャーや上司との関係などが多いのですが、水面下ではテクノストレスの影響でストレス耐性が下がっている側面もあるのではと思います。