「AED(自動体外式除細動器)で助けた女性から被害届が出された」との証言をニュース番組「ABEMA Prime」(ABEMA)で放送したことをめぐり、ABEMAは2025年2月25日に公式サイトで、「10年ほど前の事案につき、事実関係の詳細の確認が十分とはいえないまま放送していました」とする声明を出した。
放送では、単に「過去に」とのみ説明していた。この点に加えて、SNSでは、「10年前のことだからちゃんと確認せずに放送して良いって認識がヤバないか?」といった声が寄せられている。
証言の信ぴょう性に疑問の声相次ぐ
1月20日放送の「ABEMA Prime」では、男性が女性にAEDを使う際のリスクをテーマに、ジェンダー論が専門の近畿大学の奥田祥子教授や防災アドバイザーの兼平豪さんらをゲストに議論するという内容だった。
その中で、司会進行の仁科健吾アナウンサーが、「過去にAEDで女性を助けたあと、強制わいせつで被害届を出された男性」を取材したとして、その証言を紹介。画面には「女性を助けただけなのに...」として経緯が文字でも説明されていた。
番組での説明によると、男性は道で倒れていた女性を心臓マッサージとAEDで救助。毛布の中で女性の衣服をめくりAEDパッドを貼り付けた。救急車を呼び、自身も病院へ行き看護師へ名刺を渡したという。ところが後日、警察から強制わいせつ罪で被害届が出ているとして事情聴取を受けたという。届けを出したのは女性の親で、最終的に和解で決着したと説明した。
続けて、こうした場合の民事訴訟リスクはきわめて低く、刑事でも女性へのAED使用での逮捕は聞いたことがないという弁護士の説明も合わせて紹介した。
番組放送後、SNSでは男性の証言の信ぴょう性を疑う声が相次ぎ、波紋を広げた。2月16日には、朝日新聞出版のニュースサイト「AERA dot.」が、警察庁は今回のようなAEDで救助された女性側が強制わいせつで被害届を出し、警察が受理した事例について「把握しておりません」と回答したと報じていた。
企画趣旨も説明「AEDの使用を躊躇しない」、事実関係は「再取材」
ABEMAは25日、「『AEDで助けた女性から被害届が出された』という内容のSNSの投稿を紹介いたしました」として、次のように釈明した。
「番組としては、投稿した男性に事前にお話を伺ったうえで紹介しておりましたが、10年ほど前の事案につき、事実関係の詳細の確認が十分とはいえないまま放送していました」
事実関係については再取材を進めており、「今後、番組で適切に対応する方針」という。
続けて、企画趣旨について「『AEDの使用を躊躇しない』という趣旨で制作いたしました」と説明した。
なお、発表では「10年ほど前の事案」と説明されたが、番組内では仁科アナが「過去に」と述べたのみで言及されていなかった。Xでは「10年前の事案だったのか。十分な裏付け取材せずに放送したのは無責任だな」「10年前のことだからちゃんと確認せずに放送して良いって認識がヤバないか?」「釈明ではなく、謝罪するべきだ」といった声が寄せられた。