10代、20代の若い世代のインターネット利用時間が1日に平均7時間以上になるという。
特に学生は、仕事や学校以外の「私用」で使う時間が5時間近くになることが、NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2025年2月21日に発表した「インターネット利用時間調査」でわかった。
そんなに長時間ネット漬けで大丈夫なのか。調査した専門家に聞いた。
職業では「学生」、性年代では「女性10代」がずば抜けて長時間
モバイル社会研究所の調査(2024年2月)は、全国の15~79歳の男女6251人が対象。ICT機器(スマホ/タブレット/パソコン)のいずれか1つ以上を利用する人に、1日平均何時間インターネットを利用しているか聞いた。
【図表1】は仕事・学校での利用時間を横軸、仕事・学校以外の私用での利用時間を縦軸として職業別に集計したもの。仕事・学校(横軸)に着目すると、会社員や自由業、経営者、学生は1日平均3時間前後と長く、パート・アルバイトや専業主婦(主夫)は1.5時間以内と短い。
私用(縦軸)に着目すると、学生が5時間とずば抜けて長く、無職の4.2時間、自由業の3.4時間と続く。
これを表形式にまとめたのが【図表2】だ。仕事・学校、私用を合わせた利用時間は、学生が最も長く7.8時間(学校が2.8時間、私用が5時間)。次いで自由業の7時間(仕事・学校が3.3時間、私用が3.7時間)、会社員(事務系)の6.1時間(仕事が3.2時間、私用が2.9時間)と続く。
【図表3】は仕事・学校での利用時間を横軸、私用での利用時間を縦軸として、性・年代別に集計したもの。仕事・学校(横軸)に着目すると、年代別の傾向として男女とも20代が最も長い。性別では、男性のほうが女性より仕事・学校での利用時間が長くなり、特に30代以上では差が大きくなる。
私用(縦軸)に着目すると、20代以下では男女とも4.5時間以上と長い。しかし、30代になると女性、男性ともに私用での利用時間が大幅に短くなる。家庭をもつ人が多くなるからだろうか。
これを表形式にまとめたのが【図表4】だ。仕事・学校、私用を合わせた利用時間に着目しても、10代と20代が突出して長い。10代女性7.7時間(仕事・学校が2.5時間、私用が5.2時間)、20代男性7.7時間(仕事・学校が3.1時間、私用が4.6時間)と私用が多いのが特徴だ。
60代と70代に着目すると、女性は男性の3分の2程度に短くなり、50代以下の年代と比較して男女差が目立つ。
スマホネイティブ世代は、ネット利用に対する抵抗感が低い
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当したモバイル社会研究所の吉良文夫さんに話を聞いた。
――今回のようなインターネット利用時間をさまざまな職業、年齢、性別で比較し、わかりやすく表示した調査は過去にも行ないましたか。
吉良文夫さん 今回が初めてです。なお、総務省情報通信政策研究所では毎年調査を行なっており、2023年度ではインターネット利用時間の平均(全体)が約3.5時間で10年前(2014年)の約2.5倍に増えています。特に10代は1日約6時間利用しており、突出して多い傾向にあります。
――【図表1】と【図表3】を見ると、職業では「学生」、性別・年代別では男女とも10代と20代が私用でインターネットを利用する時間がずば抜けて多いです(5時間~4.5時間)。この理由は何でしょうか。
吉良文夫さん 20代前半は学生比率が高いこともあり、15~19歳/20~29歳の年代で男女とも利用時間が多くなったと思われます。学生は社会人と比較して自分の裁量で自由にできる時間が多いですし、特に若い世代は子どもの頃からスマホでのネット利用が当たり前でしたので、ネット利用に対する抵抗感も低いと考えています。
「IoE」ではネット接続すら意識されない状態に
――しかし、10代・20代は1日に7時間以上もネットを使っています。8時間近い人もいるわけで、1日の3分の1に該当します。
ネットの長時間利用は「睡眠時間が減り、健康や成長に悪影響が出る」「勉強時間が削られ、成績が下がる」「ネットを使っていないとイライラし、精神的ストレスになる」などの弊害があるとされています。心配はないのでしょうか。
吉良文夫さん ネットを利用していることによるストレスや生活への悪影響の程度については、今回の調査から論ずることは難しいです。必ずしも画面を凝視するような使い方ばかりではないと思いますし、ストリーミングで音楽を聴いているのかもしれません。
私用での利用内容も人それぞれだと思います。スマホやPCは常時ネット接続・ネット通信していることも珍しくないです。
「IoE」(Internet of Everything、すべてのインターネット)という概念は、文字通りモノだけではなくヒトやサービスも含めたすべてがインターネットにつながることを指します。最終的には生活のあらゆる場面でネット接続・ネット利用していることすら意識されない状態になるとも言われています。
利用時間を減らすよりも、ネットとの上手な付き合い方が大切
――もうそういう時代に入っているということでしょうか。ところで、60代上のシニア層では、女性より男性のほうが利用する時間がかなり多いですが、この理由は何でしょうか。
吉良文夫さん シニア層では、男性の利用が多いというよりも、女性の利用が少ないという理解です。シニア層の女性は、現役時代において、仕事や日常生活でネット利用に迫られる場面が少なかったことからネット利用のハードルや抵抗感が大きく、パソコンなどを使えない方も多いと推測しています。
――70代の私は個人的には若い世代にもっとインターネットを使う時間を減らして、野外活動をしてほしいと思いますが、どんな方法があるでしょうか。アドバイスをいただけると助かります。
吉良文夫さん 個人的には、単に時間を減らすというよりも、ネットとの上手な付き合い方、利用内容を上手くコントールできることが大切だと考えています。1日のネット利用を自身で振り返り、スマホなどに振り回されないようにしてほしいと思います。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)