近年のデジタル技術の進展により、従来、営業職に求められた仕事内容は大きく変わろうとしています。生成AIの活用による顧客対応や、オンライン取引の拡大によって営業を介さずに取引が完結するケースも増えています。これからの時代に「営業職として生き残るための専門性やスキルを高めたい」と考えている人も多いのではないでしょうか。
今回は、OpenWork(オープンワーク)の会社評価レポートをもとに、「営業職の中途入社者」による評価に限定し、「総合評価」の高い企業を調査。企業の事業成長を支える営業職に転職した社員が活躍する企業には、どのような特徴があるのでしょうか。
また、営業職を募集する企業はどんなことを求めているか。私、オープンワーク マッチング事業部の和田大生(わだ・ひろお)が解説していきましょう。
中途入社した営業職はどんな職場環境を評価したか?
中途入社した20~30代の営業職社員による回答から、総合評価(5点満点)が高い企業でランキングを作成しました。トップ10社に投稿されたクチコミからは、3つの共通評価項目が見えてきました。
1つ目は、成長を実感できる環境が整っていることです。
具体的には、ただの「物売り営業」にならない営業経験ができることや、目標達成のための道筋を自ら考えながらアドバイスをもらえる環境があることに対して、クチコミに寄せられています。
・営業として決してプロダクトアウトにならず、顧客の課題を深掘りして、顧客と一緒にDXの実現に向けた提案ができる。(法人営業、セールスフォース・ジャパン)
・数字はトップダウンだが、業務内容はボトムアップ。達成のための施策を自分で考え、マネージャーなどに適切に伝えることができれば全面的なサポートを行ってもらえる場合が多い。(営業、アマゾン ウェブ サービス ジャパン)
2つ目の共通点は、縦横のコミュニケーションが盛んで、社員の士気が高い点です。
社員が自由に意見を交換できる場を大切にしており、協力体制を敷きながらも個々人が目標達成に前向きになれる環境が重要。アドバイスやナレッジを個人に留めることなく、チームや社内に発信・共有することで、組織全体の目標達成を目指す社員が多いのではないかと考えられます。
・本当に優しい人が多い風土。何を聞いても誰かが絶対反応してくれるので、この人達と頑張りたいと思える現場。フロントはコミュニケーションも活発で和気藹々としている。(営業、パーソルキャリア)
・組織の風通しが良く、マネージャー以上の役職者ともコミュニケーションをとる事が容易。(営業、リクルートスタッフィング)
・今ある仕事、環境に胡座をかかずに常にビジネスの種を撒き続けることがモットー。上下関係はガチガチではなく、基本的に言いたいことはどんどん言ってOK。遠慮して成果が上がらないよりも、結果を出すことを重視。(営業、マクニカ)
最後に、「営業といえば」ですが、自身の成果が適切に評価され、昇格や昇給、インセンティブに反映される環境も上げられました。社員の努力や成果に合わせて評価がされている感覚が社員のワークエンゲージメントにも影響しているのではないかと考えられます。
・実力が全ての環境において、成績があれば待遇は天井なし、その反面成績が伴わないと待遇は全くなしとなる場合もある。(営業、プルデンシャル生命保険)
・インセンティブが細かく設定されており、モチベーションに繋がる。(評価の)時期も項目も細かく評価され、随時MGRによるフィードバックもあり、自分の強みや弱み含めて妥当に評価してもらえる。(営業、リクルートスタッフィング)
営業職を募集する企業が求めていることは?
営業職は自社サービス・プロダクトの認知度や魅力度を高める人材であり、事業成長の推進者です。私自身も多くのお客様の採用支援を行っている身ではありますが、ほとんどの企業が営業職の採用を積極的に実施しています。
特に、プレイヤーとして成果にコミットできる人材と、プレイヤーを束ねて成果最大化を導いていくリーダー/マネージャー候補の募集が多いように感じています。
営業職の仕事のあり方はコロナ前後やAIの台頭によって日々目まぐるしく変化しているものの、求められる素養は普遍的です。端的に言えば、自社の成果と顧客の課題解決を双方向考えながら、win-winを作ることができる力があるか、結果として与えられた成果を創出できるかが求められています。
営業職としてのキャリアアップを希望する人は、これまでどのように数字に向き合ってきたのか。苦しい局面になった時にどのように考えて行動してきたのか。自身の営業に対する考え方や得意な営業スタイル、アカウント管理方法を振り返ることが大切なのではないでしょうか。
また、リモート営業の浸透やAI、セールスイネーブルメントによる効率化など、これからの営業職はその時々の柔軟な思考力と成果追求を同時に持ち合わせた非常に高度な専門職になる可能性が高いと考えています。
そのため求職者は、自らの営業の専門性を高めていく環境を模索する上で、商品力や知名度だけで会社選びをするのではなく、先述した3つの観点が備わっているのか、自身の営業スタイルがその会社の営業組織や文化にマッチしているかを確認することを強くおすすめします。
今後も、営業職の中途入社者にとって魅力的な企業が増えていくことを期待しています。
【プロフィール】
和田大生(わだ・ひろお)
オープンワーク株式会社 マッチング事業部 企業コンサルティングユニット キャリア採用グループ
大学卒業後、2021年にオープンワーク入社。リクルーティングコンサルタントとして、一貫して大手総合コンサルファームや日系大手メーカー、テック系ベンチャー企業などの中途採用を支援する。現在はメンバーマネジメントや自社採用なども奮闘中。