2026年卒大学生・大学院生の就職活動がかつてないハイペースで進んでいる。
リクルートの就職・採用関連の研究機関「就職みらい研究所」が2025年2月18日に発表した「就職プロセス調査(2025年卒)『2024年5月1日時点内定状況』」によると、2月1日時点での内定率が39.3%と、昨年同月時より約15ポイントも上回っている。
焦らずにしっかりと就活を進めるにはどうしたらよいか。同研究所所長の栗田貴祥さんに聞いた。
前年同月を15ポイント上回る最速の内定早出し
就職みらい研究所の調査(2025年2月1日~7日)は、2026年卒業予定の大学生929人と大学院生347人の合計1276人が対象。
2月1日現在の内定率(大学生のみ)は39.3%(前年比15.4ポイント増)と、現行の就活スケジュールになった2017年以降で最高となった【図表1】。理系が44.3%で、文系の37.1%を大きく引き離した。また、男性が41.4%で、女性の37.0%を上回っている。
内定取得企業数の平均は1.88社。2社以上から獲得した人が41.¥1%に達した。内定取得企業の分野別では、情報通信業(32.4%)がダントツ1位、次いでサービス業(17.5%)、製造業(機械以外、12.1%)、小売業(11.8%)と続く【図表2】。
スタートダッシュの早さを反映して、進路確定率も20.6%と前年比を6.5ポイント上回っている。また、就職活動にAIを活用したかを聞くと、2月1日時点で活用した経験がある学生は56.0%だった【図表3】、
理系は昨年の2倍、情報通信業界でDX人材の奪い合い
これほど早いペースで進む就職活動、焦らずに自分に合った会社を見つけるにはどうしたらよいか。J-CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった就職みらい研究所所長の栗田貴祥さんに話を聞いた。
――これほど急にスピードアップした理由は、ズバリどこにあるのでしょうか。また、今後もスピードアップの傾向は続きますか。
栗田貴祥さん 現行のスケジュールでは、卒業年次の6月1日からが企業の選考活動の開始とされていますので、卒業年次前年の2月1日時点で4割近い内定率の高さはかなり高い状況といえます。
当研究所では、各卒年で、2月から10月まで、毎月内定率を調査していますが、2026年卒の2月の内定率は、2017年卒以降でみても最高値となっています。この内定率の高さは、引き続き、昨今の人手不足による、企業の採用意欲の高まりによるものと考えております。
なんとか採用計画人数を確保しようと、インターンシップ等で早期に接点を持ち、そこから選考活動・内々定出しを実施する企業が増えていることが要因として考えられます。今後に関しては、引き続き採用意欲の高さがうかがえるため、2025年卒より高い内定率で推移していく可能性は十分に考えられます。
――昨年同月に比べると理系の内定率(昨年22%⇒今年44%)が突出して高く、2倍になっています。これはどういう理由でしょうか。内定取得企業の業種をみると、情報通信業がずば抜けて高いですが 、このことと関係があるのでしょうか。
栗田貴祥さん 折からのデジタル化の進展に伴い、DX人材の需要は変わらず高い状況です。この影響から、専門知識を持つ理系の学生に対する需要も増加しています。DX人材の需要が特に顕著な情報通信業界では、その影響が色濃く出ている可能性は十分に考えられます。
周囲の状況に左右されず、自分の基準で納得感ある企業選びを
――これほどハイペースで企業の選考が進むと、学生の本分である勉強に差しさわりがあります。勉強と就職活動の両立をどう図っていけばよいのか。また、納得感のある企業選びに結び付けるにはどうしたらよいか、学生たちにアドバイスとエールをお願いします。
栗田貴祥さん 企業の選考活動の早期化により、学業との両立が難しくなるケースもあり、早期に内定を得た学生は安心感を得る一方で、準備不足で選考に臨む学生も多いという話も聞こえてきます。学業と就職活動のバランスを取ることが難しいと感じ、早期の選考に戸惑う学生も多いようです。
ただ、26卒の学生の皆さん現時点でまだ内定を得ていないからといって焦る必要はありません。就職活動で一番大事なのは、早いタイミングや多くの企業から内定を得ることではなく、自身の基準で納得のいく就職先を見つけることです。
周囲の状況に左右されることなく、自分らしい選社基準を磨きこんだうえで、納得感のある企業選びを進めていただければと思います。
AIの活用は参考程度に、自身の考えや言葉で内省を深めよう
――ところで、就職活動でAIを使った経験者が56%もおり、AIの活用がかなり広がっていますが、注意点をアドバイスしてください。
栗田貴祥さん 「自己PRの作成」「エントリーシートなどの作成と添削」「志望動機の作成」など書類選考に関連する用途に加え、AIを活用して「面接の想定質問」を作成したり、AIを利用して受け答えの練習をしたりするなかで、AIからのフィードバックを参考にするというケースも出てきているようです。
生成AIの活用が就職活動の負荷低減につながり、自らの経験の内省を深める手助けとなれば学生にとってプラスと言えます。
しかし、AIから得た回答をそのまま吟味せず、エントリーシートや面接などで使用することは避けるべきです。あくまでもAIから得た情報は参考情報の1つとして捉え、自身の考えや言葉で内省を深めながら就職活動を進めていくことが重要だと思われます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)