老舗の「ホテル雅叙園東京」(東京都目黒区)で結婚式が次々にキャンセルされた騒ぎが起き、ホテルを運営する目黒雅叙園は2025年2月18日、建物所有者との定期建物賃貸借契約が満了することで一時休館する事情について公式サイトで発表した。
所有者は、カナダの大手投資ファンド「ブルックフィールド・アセット・マネジメント」で、1月にホテルの一部を取得していた。なぜ予約者の結婚式が終わるまで契約を続けられなかったのだろうか。
カナダの大手投資ファンドが1月にホテル所有権の一部を取得
結婚式のキャンセルについては、2月15日ごろから、X上などで予約者からの悲鳴の書き込みが相次いだ。1年ぐらい前から予約する必要があり、代替の式場もなかなか探せない状況だからだ。
17日になって、ネットニュースでも取り上げられ、騒ぎが拡大した。一方、雅叙園はこの日、10月から26年3月まで全館リニューアル工事を行うと公式サイトで発表したが、その後削除し、翌18日に代わりとなる「休館のお知らせ」を総支配人が出した。
そこでは、25年9月30日で契約満了となるため、10月1日より一時休館にすると説明した。予約者に対しては、個別に連絡したうえで、「誠意をもって対応させていただく所存でございます」と述べた。そして、「お客様には多大なるご迷惑とご不便をおかけいたしますこと、深くお詫び申し上げます」と謝罪している。
過去の報道によると、ホテルは、中国政府系ファンドなどが15年に森トラストから取得した後、長く親しまれた目黒雅叙園から2年後にホテル雅叙園東京に改名している。日経新聞の22年10月28日付ウェブ版記事では、中国政府系ファンドが土地・建物を売却する方向で、ブルックフィールドが優先交渉権を得たと報じられた。
その後、米ブルームバーグの25年1月27日付記事で、ブルックフィールドが雅叙園の所有権の一部を取得したと報じられた。背景には、円安と低金利によるインバウンド需要のため、ホテル投資などへの外資の関心が高まっていることが挙げられている。
ブルックフィールド「コメントは差し控えたい」
結婚式キャンセルについて、X上では、ホテルオーナーの変更で改装工事を行うためだと雅叙園から連絡を受けたとの投稿がいくつかあった。また、2月17日には、雅叙園のブライダル担当から改装工事の連絡がメールで来たと投稿があり、メールだとする画面もアップされた。
そこでは、建物所有者から工事申し入れを受けたが、予約者がいることから工事期間などの再検討を求めて、1か月ほど繰り返して計画見直しを所有者に申し入れてきたと説明があった。それにも関わらず、予約者への配慮が行われなかった形だ。
それでは、なぜ予約者の結婚式が終わるまで定期建物賃貸借契約を続けられなかったのか。 この点について、目黒雅叙園の広報担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、次のように説明した。
「契約満了の日程は決まっていましたが、運営に特化した契約ができないか別に交渉していました。しかし、運営特化が確定していない中で、賃貸借契約満了後の予約を取り続けていました。運営に特化できないかについては、現在も交渉しています。10月以降のことについては、何も申し上げられません」
ブルックフィールドが1月に所有権の一部を取得した後、同社との契約満了による休館は2月10日に決まり、14日から約180組の予約者に電話で連絡したという。17日に予約者への一斉メールを送っていたことも明らかにした。その内容については、答えられないとした。
予約者とは、9月までに結婚式を前倒しできないか打診し、6、7割で前倒し実施になったという。前倒しできないときは、申込金20万円を返金し、迷惑料10万円も支払っている。残りの予約者とは、現在も個別に対応しているという。
当初の発表を削除したことについては、リニューアル工事についてはホテルから発信すべき情報ではなかったからだと説明した。
契約満了の延期などの対応がなぜ取れなかったのかについて、アジア太平洋地域を担当しているブルックフィールド・オーストラリア支社の広報ディレクターは20日、取材に対し、「この件についてのコメントは差し控えさせて下さい」と英語のメールで答えた。雅叙園公式サイトの発表を引用して、これを参照してほしいとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)