新潟県を拠点とするアイドルグループ、NGT48の中心的メンバーとして知られ、今は俳優として活動する本間日陽(ひなた)さん(25)が、まもなくグループ卒業から1年を迎える。
約1年ぶりに出した写真集のタイトルは「プレパレーション」(KADOKAWA、2025年2月14日発売)。動き出す前の準備のポーズを指すバレエ用語で、本間さんにとっての「これから」を表現している。
ソロ1年目は、テレビドラマのゲスト出演や、地元・新潟県の衆院選PRでも活躍した本間さん。2年目以降も活動の幅を広げていきたい考えで、いつかはNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)や大河ドラマ出演で「故郷に錦を飾れるような存在に」と意気込む。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)
コロナ禍一段落で「人との触れ合い」を写真集に収められるように
―― 写真集は「ずっと、会いたかった」(21年5月)、「陽射し色」(24年1月)に続いて3冊目です。1年強という比較的短い間隔で出版が決まったことをどう受け止めていますか。
本間: 3冊目の写真集のお話をいただいたのも、セカンド写真集のイベントがひと区切りした段階で、自分の卒業も終わって、「ふう」と一息ついたタイミングでした。私の気持ちとしては、セカンド写真集がアイドルとしての集大成という意味もありましたし、「やりきったぞ」という気持ちがありました。まさかそんなお話をいただけるとは思っていなくて、最初は「冗談でしょう?」みたいな気持ちでした。
KADOKAWA編集者: もちろん売れたというのは大きいですが、卒業のタイミングと卒業後では、本人が思っている以上に大きく変わると思います。それを早く写真集にしたかった、ということです。
―― 前作は香川県、今作はバリ島で撮影しました。24年9月に3日かけて撮影したと聞きました。
本間: バリに行くのは初めてで、撮影をしていると町の人たちが「何の撮影?」と声をかけてくださったり、「一緒に写真撮ろうよ」と映り込んで来てくださる方がいたりして、本当に町の方が気さくだったのが印象的でした。これまでの写真集はコロナ禍だったのもあって、あまり人との触れ合いのようなものを収めることができなかったので、念願がかなったという思いです。行ったことのない土地で新しい体験ができました。特に撮影期間は現地でお祭りが行われていたそうで、街中が豪華に装飾されていたのが印象的でした。
―― 「これまでの2冊ではできなかったが、今作で実現できた」といった事柄はありますか?前作との違いといいますか......。
本間: やはり、街の人たちとの関わりですね。同年代の方たちと一緒に写真を撮ったのも思い出に残っています。前回は一緒に旅をするイメージで、笑顔が多めのカットを意識して多めに入れていましたが、今回はちょっと大人っぽい表情や、茶目っ気のあるカットも多くあるので、お気に入りのカットを皆さんにも探してほしいですね。
衆院選PR起用は「ひとつ目標かなった瞬間」
―― 海外ロケは、NGT48時代にウラジオストクで撮影した「世界の人へ」(18年)のMV以来ですか?日本で撮るのとも、北の方で撮るのとも、また違った趣がありますね。
本間: そうなんですよ!グループ活動を始めてすぐの時、釜山でお仕事をさせていただいたこともありましたが(15年の「アジア・ソング・フェスティバル」)、海外とはいえ「もう着いちゃう」みたいな場所だったので、長時間のフライトは初めての体験でした。
―― 釜山は2時間、ウラジオストクも2時間半で着きますからね...!(編注:ウラジオストクへの日本からの直行便は運休が続いている) ところで、タイトル「プレパレーション」は本間さんがつけたと聞きました。一般的には、英語の準備する=prepareの名詞形として理解されることが多いと思います。ちなみに英英辞書で語源をたどると「事前に用意する」の意だそうです(フランス語またはラテン語起源で prae 'before' + parare 'make ready')。バレエ用語から来ているそうですが、タイトルに込めた意味を教えてください。
本間: 6歳からクラシックバレエを習っていました。プレパレーション、プレパラシオンと言ったりもしますが、先生からはすごく「大事にしなさい」と言われてきた動作のひとつです。このプレパレーションができていないと、ジャンプしたり回ったりがきれいに決まりません。自分がグループを卒業して、俳優として新しい経験を積みながら「こういう作品に出たいな」「俳優としてこういう存在になっていきたいな」という希望が膨らんでいく中で、その目標に向けて、プレパレーション=準備している期間だと思っています。その瞬間を切り取った1冊になっています。
―― 24年4月にNGT48を卒業し、まもなく1年です。なるほど、バレエの「プレパレーション」を、ソロ1年目の自分に重ねているわけですね。
本間: クラシックバレエは私の中で原点なので、今の自分にぴったりな、私らしいタイトルがつけられたと思います。
―― この「プレパレーション」の1年でもっとも印象的な仕事は何ですか。5月に「Believe-君にかける橋-」(テレビ朝日)にゲスト出演したほか、10月の衆院選では新潟県の「投票応援アンバサダー」に起用されるなど、注目度が高いものもありました。
本間: 挙げていただいた2つが、特に自分の中でも大きな出来事でした。ドラマ出演はグループ卒業後初めての演技のお仕事でした。木村拓哉さんと共演させていただいたのも大きかったです。グループ卒業後は新潟の広告に出るのが目標だったので、アンバサダー就任のお話をいただいた時は、ひとつ目標がかなった瞬間でした。
一人旅は「思い立ったらすぐどこにでも」
―― 写真集のテーマは「ひとり旅」。ソロ活動をするようになったから「ひとり旅」なのですか?
本間: 写真集をきっかけにもっとステップアップしていけたら、という思いがありました。アイドルから俳優に移り変わっていく、ちょっと曖昧な時期の撮影だったので、自分自身と対話する、新しい土地に行って新しい体験をすることによって、何か得られるものがあったら......という思いでした。前作が読者の方と一緒に香川を旅するという点にフォーカスを当てていたので、今作は自分との対話を通じて「まだ何でもない自分」「等身大の自分」を収められたと思います。
―― ところで、実際に自分で一人旅をすることはありますか。
本間: します。思い立ったらすぐどこにでも行っちゃいます。海外はまだありませんが、国内は近場だったらすぐ行動しますね。(免許を取得しておらず)運転ができないので電車を使っての旅です。最近では、朝起きて初詣に鎌倉行こうと思ってふらっと行ったり......。そこで行ったことない小道を見つけて、その先にあるカフェに入ってみたり......。そういうことは、結構日常的にやりますね。
―― 非常にアクティブですね......!24年10月に行われたHKT48の豊永阿紀さん(25)とのトークセッションでは、疲れているはずの卒業公演の翌日に地元・村上市を案内したというエピソードが披露され、すごい体力だと驚きました。
本間: あの時は結構余裕でしたね......!(笑)
ラジオ収録で「月に1回は絶対に新潟に帰れる安心感」
―― 卒業を機に活動拠点を東京に移しましたが、選挙の仕事やラジオのレギュラー番組「ひなたまつり」(BSNラジオ)など、新潟に関連する仕事は引き続き多いと思います。ラジオ番組には古巣のNGT48メンバーが出演したり、先ほど話題が出た豊永さんとのトークセッションは、HKT48やNGT48メンバーが出演する「Boosty (ブースティー)ファンまつり」の一環だったりと、48グループとのつながりも続いています。卒業後、新潟県や48グループの見え方は、どう変わりましたか。
本間: ギャップのようなものは、あまり大きくありません。卒業を考えるのと同時に少しずつ1人での仕事も増やしていきましたし、元々10代から東京と新潟で半々の生活は続けてきたので......。ですが、やはりグループを抜けてから見えてくるグループの姿は、すごく新鮮に映りますね。NGT48では、最近5期生のメンバーが加入しました。私はもう全く接点がないのですが、「ひなたまつり」では毎週、NGT48のメンバーがゲストに来て近況を教えてくれたりするので、そういったところでまた会えるのが楽しみです。
―― 都内のスタジオか、リモートで収録しているのですか?
本間: いえ、新潟に帰って......。
―― 数週間分をまとめて収録するわけですね。
本間: はい、「ひなたまつり」のおかげで月に1回は絶対に新潟に帰れるので、安心感にもつながっています。ご一緒させていただいているギターデュオの「ひなた」の2人の温かさや活動に刺激をもらいつつ、NGT48メンバーとも会えるので、同期や近い期の後輩の近況に触れると安心もします。後輩の成長もそこで感じることができています。他の卒業メンバーよりは、結構グループに近い位置にいると感じますね。
―― 以前本間さんにインタビューしたのはNGT48の楽曲「シャーベットピンク」(20年7月発売)の時でした。藤崎未夢(みゆ)さん(24)が正規メンバーになる前の「研究生」から初めてセンターポジションに抜擢された楽曲でした。当時一緒にお話しをうかがった藤崎さんも、今はグループのキャプテンで、隔世の感がありますね。
本間: すごいですよね。5年しか経ってないんだ...!という感じですが、みゆみゆ(藤崎さん)に関して言えば、私が卒業するときは、すでに隣でめちゃくちゃ支えてくれていたので、みゆみゆが引っ張っているグループの活躍を聞けるのは嬉しいですね。
―― 25年4月で、卒業から丸1年になります。「ソロ2年目」では、どんなことに取り組んでみたいですか。
本間: 昨年(24年)は本当に新しい体験、経験をいっぱいさせていただいたので、今年(25年)は俳優としてより実力をつけられるような1年にしていけたらと思っています。これまで以上にたくさんの作品に携われるように頑張っていきたいです。衆院選で広告に出られたことがすごく自分にとって刺激になったので、これからも新潟でのお仕事も大切にしていきたいという思いを忘れずに、全国的に色々な方に知っていただけるように頑張りたいです。
―― お話しが出たように、選挙への起用は特に大きな出来事だと思っています。官公庁は、幅広い層から好かれる、ある意味「アンチ」がいない人しか起用しない傾向があるからです。アイドルファン以外にも知られる機会が増えたと思います。
本間: すごく反響はいただきました。テレビCMも新潟県内全域で流れたので「CM見たよ」と声をかけていただく機会も多かったですし、新聞のチラシにも折り込まれていたりして、ファンの方以外にも地元の知り合いの方、知り合いのお母さんから嬉しいメッセージをいただけたりしました。本当に励みになったので、より一層、新潟の広告にもたくさん出られるような存在になれたらと思います。
ドラマの舞台が新潟県になったら......?
―― 他社の過去のインタビューでは、ドラマ、特にNHKの朝ドラや大河ドラマへの思いも口にしていました。
本間: 小さい頃からの目標です。おじいちゃんおばあちゃんと一緒に毎朝、毎週末見ていた作品ばかりなので、自分もそこに出られるように、そして故郷に錦を飾れるような存在になりたいですね。
―― 放送中の朝ドラ「おむすび」は、福岡市出身の橋本環奈さん(26)が主演で、福岡と神戸が舞台です。元HKT48の兒玉遥さん(28)、田中美久さん(23)、元SKE48の松井玲奈さん(33)と、結構48グループ出身者が出演していますね。
本間: そうなんですよ......!
―― もし舞台が新潟になったら、ちょっと違った局面があるかもしれません。
本間: なので、チャンスをつかめたときに、いつでも爪あとを残せるように、準備はしていきたいと思っています。
―― アイドル卒業ということで、演技やタレント活動が中心になりそうですか。歌ったり踊ったりも「卒業」ですか。
本間: お芝居が中心ではあるのですが、実は明日(編注:収録翌日の2月14日)踊るんですよ(笑)。明日、小林幸子さんがクラブで歌われますが(音楽イベント「ZIPANGU the Party!!」)、その後ろでちょっとヒロイン的な役割があるダンスを披露させていただきます。
―― 俳優という職業でも、アイドル時代のスキルは生かせるわけですね。
本間: こんな機会をいただけるとは思っていなかったですし、何か新しいことに挑戦するのはすごく好きなので、「お芝居だけしかやらない」ということではなく、色々なことに挑戦していきたいです。
―― 小林幸子さんも新潟県人です。縁を感じるところですね。
本間: いつか幸子さんのような存在になりたいので、今回ご一緒できるのはすごく嬉しいです。より一層、自分の活動に対する想いが深まるような1日になると思っています。
本間日陽さん プロフィール
ほんま・ひなた 1999年生まれ、新潟県村上市出身。2015年にNGT48に1期生として加入。3枚目シングル「春はどこから来るのか?」(18年発売)と8枚目シングル「渡り鳥たちに空は見えない」(22年発売)でセンターポジションを務めた。AKB48グループで行われていた選抜総選挙では、17年、18年の2年連続で上位16人の「選抜」入りした。
24年4月にNGT48を卒業後は俳優として活動。主な出演作は、 新潟4局合同ドラマ「夜明けまえの彼女たち」、テレビ朝日「Believe-君にかける橋-」など。24年10月に行われた衆院選では、新潟県選管の「投票応援アンバサダー」に就任。