NHKのニュース番組「首都圏ネットワーク」で、2025年2月4日、農家が廃棄野菜で作るせっけんを紹介した。この放送内容をNHK横浜放送局の公式Xが紹介したところ、アレルギーを誘発するリスクがあるとする指摘が寄せられた。
番組内では用途は明かされなかったが、台所用せっけんとして販売されており、製造者は今後、「手袋の使用」の推奨を徹底するとしている。
「食べ物を肌に塗る成分として加工して使うことは望ましくない」
番組では、農家が規格外で廃棄される野菜を使った、「もったいない」精神から生まれたせっけんを紹介。キャベツやひじきを使ったせっけんを手作りする様子を放送した。保湿効果があるとも紹介された。
4日にNHK横浜放送局の公式Xがこの放送内容について、「"もったいない精神"で自然の恵みをせっけんに!」と紹介。すると、「石鹸や化粧品に食物由来の成分を使用することは『経皮感作による食物アレルギー』を誘発する可能性があります」とのコミュニティノートが付いた。
また、地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院院長特任補佐・耳鼻咽喉科診療部長の前田陽平氏もXで、番組の内容を確認したわけではないとしたうえで、
「食べ物の成分を肌に塗ることはアレルギー専門医としては避けていただきたく思います」
「食べ物の成分を皮膚に塗ることでその食べ物のアレルギーを発症するリスクがあります」
と警鐘を鳴らした。
なぜこうしたリスクが懸念されるのだろうか。前出の前田氏はJ-CASTニュースの取材に、アレルギー発症の経緯として、「皮膚からアレルゲンを体が覚えてしまう」という経緯は、よくあることだと話す。特に、肌荒れやアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリアが壊れてしまっている人は、皮膚から食べ物の成分にあるアレルゲンを身体が覚え、その食べ物のアレルギーになりやすいという。
「例えば、魚を扱う職業の人が魚のアレルギーになったり、そば職人さんがそばアレルギーになったりすることがあるのは、よく知られている現象です」
さらに前田氏は、2010年に自主回収となった「茶のしずく石鹸」の例を挙げる。このせっけんには小麦の成分が入っており、小麦のアレルギーを誘発した事例が報告され、問題となった。
食材によってアレルギーが発症しやすいものとそうでないものがあり、今回特に取り上げられたキャベツとひじきについては、「特にアレルギーを起こしやすいとされている食材ではない」としつつ、
「一般論として、食べ物を肌に塗る成分として加工して使うことは望ましくない」
と説明した。
実は肌用ではなく台所用の、「キッチンソープ」
番組では、せっけんの用途は説明されず、保湿効果があると紹介された。しかし、このせっけんを販売するサイトを確認すると、「キッチンソープ」と説明されている。肌用ではなく、食器用として販売しているようだ。
こうした用途やアレルギー発症リスクについて番組内で説明がなったことについて、NHKの見解は――。
まずせっけんの用途について、NHK広報局はJ-CASTニュースの取材に、「番組内で紹介した石けんは、食器などの洗浄を目的とした『台所用』と明記して販売されているものです」と回答した。
アレルギー発症リスクについては、「使用する場合、アレルギー反応が気になる方は成分表示を十分にご確認いただくよう、NHK 横浜放送局の X で投稿したほか、7日の首都圏ネットワーク内でも放送しました」と説明した。7日の放送では「食器などの洗浄を目的とした台所用として作られたものです」「使用する場合、アレルギーが気になる方は、手袋を付けたり、成分表示を十分に確認したりしてください」と補足説明があった。
なお、見逃し配信サービス「NHKプラス」での配信では、画面に「紹介しているせっけんは『台所用』のものです」との表示が掲載されている。
また、このせっけんを製造・販売する農家も7日にインスタグラムで、今回の指摘について謝罪。「用途以外の使用を避けるよう注意喚起を徹底し、手袋の使用を推奨するなど、適切な使用方法を明記いたします」と今後の対応を示している。
J-CASTニュースが13日に取材を申し込んだところ、7日の投稿から「情報の進展がございません。申し訳ございません」との回答だった。
2月4日の「首都圏ネットワーク」で、廃棄される野菜などを利用して作る「せっけん」を紹介しましたが、このせっけんは食器などの洗浄を目的とした「台所用」として販売されているものです。使用する場合、アレルギー反応が気になる方は成分表示を十分に確認してください。 https://t.co/Ae4xx66e3o
— NHK横浜 (@nhk_yokohama) February 6, 2025