ゆっくり座って帰れる電車...新幹線・特急、グリーン車、座席指定列車 充実路線とショボい路線の差

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   長距離を通勤している人は、帰宅するときはゆったりと座って帰りたい......と思うのは、人情だろう。週に1回くらいは新幹線や特急、普通列車グリーン車、あるいは座席指定列車に乗車して缶ビールを1本くらいの楽しみはほしい、と考えるのは自然なことだ。

   そういった列車が充実した路線と、充実していない路線というのがある。

   とくに3月のダイヤ改正では、中央線・青梅線特急「はちおうじ」「おうめ」が廃止になり、これらの路線で普通列車グリーン車が導入されることから、快適な列車・車両の状況が変わることになる。

  • 特急「はちおうじ」「おうめ」に使われる車両
    特急「はちおうじ」「おうめ」に使われる車両
  • 東急東横線の「Q SEAT」
    東急東横線の「Q SEAT」
  • 特急「はちおうじ」「おうめ」に使われる車両
  • 東急東横線の「Q SEAT」

中央線特急「はちおうじ」に乗ってみた

   筆者は先日、中央線特急「はちおうじ」に乗車した。その際に、東京駅ホームでいまは「お試し期間」として料金不要で利用できる中央線グリーン車の状況も見てきた。中央線グリーン車にはけっこうな列ができており、3月ダイヤ改正で有料になっても利用されるかどうかが気になった。

   いっぽう、「はちおうじ」にも多くの人が乗車していた。東京駅発車時には40%くらいの乗車率でも、新宿駅で多くの人が乗車し、70%くらいにはなった。車内ではお酒を飲みながらおつまみを食べている人も多かった。

   帰宅時に快適に着席して帰りたいという需要があるのは明らかで、そのために課金をする人もいるのは見てわかる。

   最近では、夕方の比較的早い時間帯の列車に多くの人が利用するようになっており、その時間帯に快適な列車が求められている現状がある。

東海道線方面は充実、高崎線方面は縮小

   JR東日本では帰宅時間帯に新幹線や特急を、私鉄でも特急や座席指定列車を走らせている。

   京王電鉄では、「京王ライナー」は好評であり、列車のようすを見ても比較的席が埋まっている傾向がある。

   小田急電鉄では「ロマンスカー」での帰宅列車は多く走っており、「ホームウェイ」の列車名で高頻度運転をしている。

   いっぽう、東急電鉄の「Q SEAT」は大井町発の田園都市線方面の列車は好調なものの、渋谷発の東急東横線方面の列車はいまいち利用状況が悪い。

   JR東日本では、東海道線方面は特急「湘南」に加え普通列車グリーン車が充実しているいっぽう、高崎線方面「あかぎ」は縮小傾向だ。宇都宮線(東北本線)方面には特急そのものがない。方面によっては新幹線の利用を促したいのだろう。着席は普通列車グリーン車があるからそれでよし、ということになる。

   新幹線用の定期券は自由席しか利用できず、普通列車グリーン車も自由席である。方面によっては座席指定サービスが不要な状況にある。

   JR東日本の東海道方面は非常に充実しているものの、その他の路線はそこまでではない。

サービス削減、廃止になる傾向は?

   複数のサービスで着席需要を旺盛に獲得しようとする路線もあれば、サービスを削減して一定の需要のぶんだけは確保、という路線もある。

   東急電鉄の東急東横線方面「Q SEAT」では、2両あった座席指定車両が1両になった。割引キャンペーンもひんぱんに実施していた。

   中央線・青梅線は「はちおうじ」「おうめ」を不要とし、「普通列車グリーン車」を選ぶことにした。

   西武鉄道では池袋線は特急「ちちぶ」「むさし」が好調だ。だが新宿線の「小江戸」を今後どうするかが検討されており、「拝島ライナー」のような列車が本川越に向かうようになることも予想される。

   着席サービスを充実させる路線と、一定のところまでやったあとそれ以上はやらない、場合によっては縮小させる路線がある。

   縮小させる路線の傾向として、まずは距離が短い、あるいは時間短縮効果が見込めないところがある。たとえば「はちおうじ」は、乗車した限り中央線の特別快速プラスアルファの速度しか出せていない。走行距離は47.4km。いっぽう特急「湘南」は、東京~小田原間の列車では83.9km走る。

   短距離の路線では、そもそも快適な車両を連結せず、そもそも利用者も求めない。

   東急東横線の「Q SEAT」は、渋谷から横浜まで乗っても24.2kmであるいっぽう、東急大井町線・田園都市線の「Q SEAT」は大井町から長津田まで26.6km。東横線は最速達種別に連結されるのではない一方、大井町線・田園都市線では最速達種別に連結される。

   快適な帰宅を利用者が求める路線で、鉄道事業者もそれに応えようとする路線は、比較的長距離で速度を出せる路線である。そう考えると、小田急電鉄が伊勢原や秦野、小田原までの通勤向け「ロマンスカー」を走らせ、好評なのもわかる。そして新幹線に速達性でかなうものはない。(小林拓矢)


筆者プロフィール

こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。

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