高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ 日米首脳会談は本当に「成功」だったのか 「テタテ」から読み解くと...

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   石破茂首相とトランプ米大統領による初の日米首脳会談が2025年2月7日にワシントンで行われた。石破首相はトランプ氏と信頼関係を構築できたのか。オールドメディアは100点満点という声が多いが、本当か。

  • 日米首脳会談は成功だったのか(写真はホワイトハウスのXから)
    日米首脳会談は成功だったのか(写真はホワイトハウスのXから)
  • 共同記者会見でのひとコマ。両首脳の距離感が問われている(写真は首相官邸のXから)
    共同記者会見でのひとコマ。両首脳の距離感が問われている(写真は首相官邸のXから)
  • 日米首脳会談は成功だったのか(写真はホワイトハウスのXから)
  • 共同記者会見でのひとコマ。両首脳の距離感が問われている(写真は首相官邸のXから)

菅・バイデン会合でも「テタテ」20分

   日米首脳会談は、日米同盟を考えると外交の最優先事項である。外務省をはじめとして官僚は事前準備をするが、今回の首脳会談でも、いつも通り事前準備は100点ともいえる。

   本番の首脳会談は、通訳のみを同席させた二人だけのサシの会談である「テタテ」、二人に少数の閣僚などを交えた「少人数会合」、関係者を広く含めワーキングランチなどの事務的な「拡大会合」となっている。もちろん、会談としては、フランス語の内密を意味する「テタテ」が最も重要であり、これは本音で話し合える。この時間が長いほど、両首脳の信頼関係を構築できたといえる。

   安倍・トランプ、菅・バイデン、岸田・バイデンの初回の首脳会談時間を見てみよう。17年2月10日・11日の安倍・トランプ会合は、日本外交史の中でも飛び抜けて実り多かった。まず、その前年の16年11月18日、世界の首脳の中で一番早く、大統領に当選したトランプ氏とニューヨークのトランプタワーで90分会談した。これはほぼ「テタテ」であった。17年2月10日ホワイトハウスで40分の「テタテ」、その後フロリダのトランプ氏所有の「マー・ア・ラゴ」に移動し、翌11日27ホールのゴルフを行った。1ホール10分としても、それだけで270分も米国大統領を独り占めできたので、「テタテ」は310分以上だろう。

   菅・バイデン会合では、21年4月16日「テタテ」20分、「少人数」55分、「拡大」65分だった。

   岸田・バイデン会合では、22年5月23日「テタテ」30分、「少人数」50分、「拡大」55分だった。

関税問題はどこまで議論?

   今回の石破・トランプ会合では、「テタテ」はなく、「少人数」30分、「拡大」80分だった。明らかに、これまでの首脳会談と比較してみると時間が短い。これでは個人的な信頼関係構築は難しいだろう。象徴的だったのが、共同記者会見後、トランプ大統領は石破首相と握手もせずにすぐに立ち去った。

   首脳会談直後の日本を含めた関税措置も事前にどこまで話してもらったのか、疑問である。日本は関税の例外を申し入れるとしているが、どうなるだろうか。

   USスチールの件でも、買収でなく投資というレトリックに乗った。これはカネは出すが口は出さないという日鉄には不都合な話だ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

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