Z世代にとって成果主義は「努力のプロセスを評価しない仕組み」
――しかし、若いのに「成果や生産性よりも何時間働いたか、で評価してほしい」という考え方が多いことがショックです。これは、社会全体が働き方改革を掲げ、長時間勤務をやめて短い時間でも成果を上げたものを正当に評価しようという動きと逆行する、後ろ向きの考え方と思いますが、いかがでしょうか。これでは、会社の椅子に座っているだけで給料をもらっている「〇〇オジサン」とあまり変わらない気がしますが......。
斎木輝之さん この傾向は、後ろ向きの意識というよりは「不安の反映」と言え、Z世代ならではの価値観の変化が影響していると考えられます。つまり、「評価の透明性」と「安定性」を求める意識の反映です。
先にも述べたように、コロナ禍や経済不安の影響を受け、「安定した雇用を確保したい」という意識が強まっています。成果主義が徹底されることで、競争が激化し、結果を出せなければ評価されないという不安があるため、長く勤めることによる評価を求める傾向が強まっているのです。
おっしゃるとおり、働き方改革の進展により、企業は「短時間で高い成果を求める」方向にシフトしましたが、これは必ずしも働く側にとってポジティブとは限りません。
「短時間で高い成果を求められることがプレッシャーになり、評価基準が不透明に感じる」「長時間働くことで評価されるほうが、基準が明確で安心できる」といったように、成果主義が「努力のプロセスを評価しない仕組み」に見えていることが、年功的評価を求める背景になっている可能性があります。
――なるほど。リポートにも新入社員は「努力やプロセスを評価されることに価値を見出している」とありましたね。
斎木輝之さん そのとおりです。特に、Z世代は指示や依頼の意図が不明な仕事には迷いが生じ、説明不足の指摘は相手に責任があると考える傾向が半数以上に見られています。
そのため、明確な評価基準がないと不安を感じやすく、「何年働いたか」といった客観的な指標を通じて「安心したい」という心理の表れといえます。ただし、ご指摘の通り、若いうちはプロセス評価も加えつつも、パフォーマンスが社会人では求められることはマインドセットしていく必要はあると思います。