「失敗」「恥」の気持ちは、SNS普及で評価がすぐ拡散する時代に
――「今」に安住しているわけですか。しかし、「失敗したくない」「恥をかきたくない」というネガティブな考えが急に広がっている理由は何でしょうか。
斎木輝之さん SNSの普及により、リスク回避の心理が強化されていると感じます。自分の言動が可視化され、常に評価される環境が生まれました。別の言い方をすると、「いいね」やフォロワー数が社会的評価の指標となり、他人の目を意識する文化の中で、他人の成功や失敗が可視化されやすい環境で育ったともいえます。
この環境は同時に、過度な自己比較を生み、「間違うこと」や「挑戦すること」への抵抗感にも影響を与えているといえます。
――たしかに、ちょっとした言動が炎上する時代になりましたね。
斎木輝之さん また、社会全体のコンプライアンス意識の高まりにより、若者たちは学校や家庭など「守られた環境」の中で育った経験が多く、SNSの炎上を含めて不確実性への対応スキルが十分に養われていない部分があります。
だから、「失敗したくない」とか「恥をかきたくない」「他人の評価を気にする」という人がほかの世代よりも高い割合に達しているのだと考えられます。
成果や生産性よりも、「勤続年数で評価されることを好む」割合が増えている結果も、リスク回避の心理が「挑戦」を抑制していることを示し、長期的な安定を確保するために「安全圏での努力」を選択する傾向が強まっているといえます。