世論調査に現れた米国民の疑問
インフレ抑制はトランプ氏の重要公約の一つだが、渡部恒雄・笹川平和財団上席フェローが「関税は輸入品の価格に転嫁され物価を上げる。物価高に不満を持ち、大統領選でバイデン支持からトランプ支持に乗り換えた有権者の期待を裏切ることになる」(「月刊リベラルタイム」3月号)と指摘するように、トランプ関税は公約とは矛盾するインフレ圧力になるとの見方が強い。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、ロイター通信と世論調査大手イプソスが2024年12月上旬に米国の成人4183人を対象に実施した世論調査では、「たとえ物価が上昇しても関税を引き上げることはよいことだ」との設問に対して、42%が「同意しない」と回答し、「同意する」の29%や、「わからない」の26%を大きく上回ったのは国民の警戒感の強さを示している。
また、関税によって貿易赤字を解消するという目標達成も心許ない。主として中国を標的として高関税を課した第1次トランプ政権時代(2017~2021年)、米国の貿易赤字を一貫して解消できなかったという事実を、トランプ氏も忘れているわけはないだろう。
「私にとって辞書の中で最も美しい言葉は、タリフ(関税)だ」。つまるところ、関税はディール(取引)をするうえでの「最強の切り札」、とトランプ氏は言いたいのかもしれないが。
(フリーライター 倉井建太)