「街の書店」次々と消えていく 1軒もない自治体3割、減少ストップの秘策はあるか

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   駅前や商店街の本屋さんがどんどん消えている。出版科学研究所によると、49坪(約161平方メートル)以下の書店数は2003年には全国に6887店あったが、2023年には3789店とほぼ半分になった。2024年8月末時点で、書店が1軒もない自治体は3割近い。本を買おうとすると、車や電車で遠方まで出かけなければならない市町村が増えているのだ。

  • 書店が1軒もない自治体が3割近くもある
    書店が1軒もない自治体が3割近くもある
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雑誌が売れなくなった

   急速に減り続けている理由は何なのか。出版・書籍や書店について詳しいライターの永江朗氏は、「経営者の高齢化と後継者難、入居していたビルの建て替え、家賃や光熱費の高騰等々。いちばん大きいのは本が売れなくなったこと、とりわけ雑誌が売れなくなった」(日本経済新聞電子版2024年11月23日)を挙げている。

   街の本屋さんの売り上げは大半が雑誌や漫画で、かつては発売日に店のおじさんが自転車の荷台に積んで、近所に配達もした。その雑誌が買われなくなった。比率は少ないものの、書籍もベストセラーは取り寄せ注文もあったが、今はネット通販で買われてしまう。

   経営はいよいよ厳しく、店を継いでくれそうな人もいない。そんな時に駅前開発の計画が持ち上がったら、「もう店をたたもうか」となるのは仕方ないのかもしれない。

本屋さんは文化の拠点

   しかし、書店はただ本を売るだけでない。その街の文化の大切な拠点だ。本屋さんがなくなることは、本の向こうに広がっているまだ知らない世界への入り口を閉ざすことにもなる。

   このままでは街の文化インフラが危ないと、本屋さんを誘致する自治体も出てきた。富山県立山町は役場の敷地内に、コンビニのローソンに「書店を併せ持った店舗」を開店してもらった。鳥取県江府町は書店だった駅前の建物を買い取り、書店を中心とした新たな施設を計画。静岡県長泉町は出版物取次の日本出版販売と連携協定を結び、公園の多世代交流施設に本と触れ合う空間を作ることを検討している。

   経済産業省も書店減少に歯止めをかけようと、大臣直属の「書店振興プロジェクトチーム」を作り、「書店経営者向け支援施策活用ガイド」をまとめた。経営専門家への相談や補助金活用などをアドバイスしているのだが、プロジェクトチームの責任者である南亮・商務・サービス審議官も、「人手不足やコスト高など構造的な問題もあるので、国が予算を投入すればいきなり書店が増えていくというようなものではなく、書店数が劇的に増えるといった目の覚めるような政策もありません」と難しさを語っている。

   せめて雑誌くらいは駅前の本屋さんで買うことにしたい。

(シニアエディター 関口一喜)

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