錠剤の薬を飲みやすくするため砕いて粉にする「便利グッズ」について、そうしてはいけない薬もあるのではないかと、薬剤師らからX上で指摘が出ている。
中には、粉にして飲んだために、重い副作用が出たケースもあるようだ。厚生労働省では、いくつか砕いてはいけない薬のタイプがあるとして、「医師や薬剤師に相談してほしい」と呼びかけている。
「砕いてラクに飲める」と商品パッケージでPR
この便利グッズについては、ある薬剤師が2025年2月9日に指摘して、話題になった。
この薬剤師は、砕いてはいけない錠剤もあるとして、飲みやすいからといって、自己判断でグッズを使用しては危険なのではないかと指摘している。
最初の投稿は、11万件以上の「いいね」が集まり、大きな関心を集めている。
便利グッズについて、ネット上で検索すると、複数の商品が出てくる。
そのうちの1つ、日用品メーカーの小久保工業所(和歌山県)が24年3月に発売した「お薬クラッシャー」は、「砕いてラクに飲める」と商品パッケージでPRしていた。
ニュースリリースを見ると、錠剤を飲み込むのが苦手な人のほか、飲み込む力が衰えた高齢者や錠剤に慣れない子ども、異物を嫌がるペットなどが対象になっている。プラスチック製の容器に錠剤を入れ、突起のあるフタを回しながら閉めると、すり鉢状になった容器の間ですり潰されるという。
ただ、パッケージでは、「ご注意」として、「錠剤を砕く際は医師、薬剤師に確認してください」などと書かれている。ニュースリリースでも、「薬によって、砕いてはいけないものもあります。事前に医療機関にご相談のうえ、ご使用ください」とあった。参考価格は、税込み385円だった。
この商品について、小久保工業所東京営業所の担当者は10日、「お薬がノドに詰まったりする方や、飲みにくいお子さんもおられます。オブラートに包んで飲まれる方法などもありますが、もっと便利なものをと考えました」とJ-CASTニュースの取材に説明した。
体内吸収のスピードが上がるため、砕くとダメな薬も
「重要な薬を飲んでいる方は、飲み方を気にしておられますので、医師や薬剤師に相談してほしいと思います。薬が溶けて、ノドや胃、腸で効く薬があり、効果を高めるためにも注意していただければ」
現在までのところ、トラブルや苦情は聞いていないという。ドラッグストアや100円ショップなどで販売しており、売り上げは好調だとしている。
錠剤を砕いて粉にする便利グッズについて、厚労省医薬局の総務課は2月10日、取材に対し、次のように注意点を挙げた。
「体内に吸収されるスピードが上がるため、自己判断で砕くとダメな薬もあります。胃で溶けずに腸で効く薬は、その1つですね。また、体内でゆっくり溶かして効果を持続させる徐放性製剤もそうです。このほかに、苦みを消すためにコーティングしている錠剤もあると思います」
便利グッズの販売は、薬機法違反などにはならないとしたが、処方薬ならば、医師や薬剤師に相談すれば、代替の粉薬にしてくれたり、砕いていい場合は砕いてくれたりするはずだと指摘した。市販薬でも、腸で効く便秘薬などもあるため、ドラッグストアなどで確かめ、問題ないようなら便利グッズを使えばいいのではないかという。
なお、徐放性製剤については、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が23年3月、砕いたりして飲むと、急に血中濃度が上がって重い副作用の恐れがあると医療安全情報を出している。日本医療機能評価機構が同年4月にまとめた報告書によると、徐放性製剤を砕いて患者に投与した結果、血圧低下や意識レベルの低下などの影響が出たケースが20年からの4年間で計7件あった。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)