「プロの道具」を町乗りする
これまで3ドアのジムニーやジムニーシエラの購入をためらっていたファミリー層が、5ドアのジムニーノマドが登場したことで、飛びついたと考えられる。
ジムニーの最大のライバルだった三菱自動車工業の「パジェロミニ」や「パジェロジュニア」など、一連のパジェロシリーズが2021年までに日本市場から姿を消したことも、ジムニーに人気が集中する要因となっている。
ジムニー人気はデザイン性にある。4代目となる現行ジムニーは「専門家が愛用する『プロの道具』をデザインコンセプトに、機能に徹した飾らない潔さを追求した」と説明されている。
スズキは初代ジムニーから続く「軽量オフロード4WD」の伝統を守り、仕事や趣味でジムニーの良さがわかるコアな愛好者に向けて4代目を開発したようだ。
そんな「プロの道具」と呼ぶにふさわしいジムニーシリーズだが、大半のユーザーはオフロードではなく、町乗りで使用している。そんなユーザーの要望に応える形で登場したのがジムニーノマドだった。人気が殺到するのも無理はない。
発表直後に受注した約5万台のジムニーノマドがユーザーの元に届くには3年ほどかかるようだ。今回の受注停止を受け、スズキは全国のショッピングモールで予定していた先行展示会などのイベントも中止するという。スズキにとっては嬉しい誤算だが、せっかくのビジネスチャンスを失うことにもなった。
(ジャーナリスト 岩城諒 )