「能力不足」だったとして、佐賀県が50代の男性職員2人を分限免職にしたと複数の新聞が報じ、定年近くになっての処分にネット上で驚く声が上がっている。
以前から能力不足だったのか、年配になってそうなったか。県の人事課に取材して、処分に至るまでの経緯を聞いた。
「仕事への姿勢が前向きではなく、弁明もなかった」
「職員1人は、回覧する書類に資料を添付してほしいと指示を出したにもかかわらず、指示通りにしませんでした」
県は2024年2月29日付で2人を分限免職にしたが、人事課は25年2月5日、うち1人についてJ-CASTニュースの取材にこう説明した。
この職員はさらに、何度も注意したにもかかわらず書類を発送せず、上司に指示されてもすぐに業務に当たらなかったという。
もう1人の職員は、繰り返し指示しても、文言や数量のチェックなど基本的な確認を怠った。また、外部の人との打ち合わせ記録を紛失したり、数日でできる事業費の算定作業を3か月かけたりしてその内容も不十分だったという。
県では、人事院が06年度に示した指針に基づき、半年間にわたって職員を指導する「職員能力向上支援プログラム」を翌07年度から実施している。2人のこうした勤務態度は、その間に見られたという。
成果主義を取り入れた地方公務員法改正で、県は、16年度から人事評価制度を導入しており、2人は、1年間の人事評価で、2回連続で最低ランクなどになっていた。その後、2か月間の改善指示を受けて、プログラムを受けていた。
今回の処分は、「人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合」などは免職できるとした同法第28条1項などに基づき行った。懲戒処分とは違い、退職金は全額支給されることになる。
「本人たちは、仕事への姿勢が前向きではありませんでした。弁明の機会も与えていましたが、弁明はありませんでした」(人事課)
処分を受けた2人は、学校を卒業して入庁し、職員として数十年間働いている。民間企業で働いた経験はないという。
「免職の2人は、以前も能力向上の指導を受けていた」
職員として数十年間働いた間、「能力不足」とみられたことはなかったのだろうか。
この点について、佐賀県の人事課は、「その間の記録は残っていません」と説明したが、処分を受けた2人は、以前も能力向上支援プログラムで指導を受けていたことを明らかにした。定年近くになって病気になった可能性については、産業医の診断を受けているとして否定した。
プログラムは、毎年0~5人の職員が受けているが、これまでに免職になったケースはなかったという。2人からは、処分についての異議申し立てはないとしている。
処分についての意見が数件来ており、「まだまだ怠け者はいる。どんどん首にするべき」といった声や、「能力不足の職員を採用したことに問題がある」との指摘も来ていたという。
今回2人を分限免職にしたことについて、県職員労働組合の書記長は2月5日、取材に対し、「人事評価は、免職が目的ではなく、能力アップのための導入だと認識しており、当局が正当な手続きをしたのか検証したいと考えています」と答えた。
能力が数値化されて最低ランクも出るため、職員労組では、当初は導入に反対していた。しかし、地方公務員法などに沿っており、職員にとってよりよい方向にすると団体交渉で妥結したという。
2人から労組に相談は来ていないものの、もし相談があれば、処分取り消し申し立てなどのサポートをしたり、自治労の顧問弁護士を紹介したりしたいとしている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)