エコー検査、レントゲン検査など、現代の医療では検査による画像診断が欠かせない。わけても日本は、医療機器であるCT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像化装置)が人口当たり保有台数で世界一という「検査大国」だ。最先端の検査が身近にある環境は恵まれている半面、医師の勧めに無条件に従って不必要な検査を受けてしまう「過剰検査」に陥る可能性にも気をつける必要がある。
診療所にもあるMRI
「脳ドックで認知症リスクを判定」「脳ドックで認知症の早期発見」――。こんな惹句がインターネットに並ぶ。超高齢社会を迎え、誰もが気になる認知症に対する不安心理をあおる。現在、国内に600か所以上あるという脳ドックの実施施設。ここまで増えた背景にはMRIの普及がある。経済協力開発機構(OECD)の2017年のデータによると、日本のMRI設置台数は人口100万人当たり51.7台と世界トップだ。欧米と異なり、中小の病院や診療所まで幅広く導入されているのが日本の特徴だ。
MRIは磁石と電波を使って体の断層像を撮る装置で、1980年代初めから本格的な臨床応用が始まった。多くの病に威力を発揮し、脳疾患や、脊髄の病気、椎間板ヘルニア、臓器の腫瘍性疾患などの診断に使われる。臓器によっては造影剤不要のため、苦痛がないというのは患者にとって何よりありがたい。放射線被ばくがないのも長所の一つだろう。
MRI検査の費用は内容によって異なるが、3割負担で数千円~1万数千円が相場だ。機器自体も高額であり、1台当たり数千万円以上という。医業コンサル会社の代表がネット上で、MRI購入に伴う費用について工事費を含め7500万円とした場合、減価償却中に検査収益だけで黒字化するためには「1日6件以上の撮影が必要」と明らかにしている。MRI導入による治療が患者の評判を呼び、「患者全体が増えるというサイクルが起きうると期待できます」と勧めるのだが、どうだろか。