航空自衛隊の音楽隊が予定していた那覇市立小学校でのコンサートが、反対意見が出て中止になったことが分かり、波紋が広がっている。
コンサートに対しては、沖縄県教職員組合の那覇支部が「政治的中立を損なう恐れがある」などとして中止を要請していた。ネット上では、職業差別ではないかとの批判が出ているが、県教組は、差別を否定し、「学校内でやることに懸念があった」と主張している。
沖縄県教組の那覇支部「政治的中立性を損なう恐れ」
コンサートを予定していたのは、空自那覇基地に所属する南西航空音楽隊だ。
音楽隊のコンサートは、2025年1月31日に市立小学校の体育館で、2校時は低学年(1~3年生)、3校時は高学年(4~6年生)を対象に行われる予定だった。
同基地の渉外室がJ-CASTニュースの取材に答えたところによると、コンサートについては、24年11月に小学校のPTA会長から打診があった。開催できそうだと伝えると、12月に校長とPTA会長の連名で正式な依頼が来た。これを受けて、調整を進めていると、25年1月22日に校長から「父兄などから反対意見が来ているので検討します」と電話があり、翌23日夜になって、校長から「すみませんが中止にします」と再度の電話があったという。
22日は、沖縄県教組の那覇支部が前日に文書でコンサート中止を学校に求めたと地元紙が報じていた。
この文書で同支部は、自衛隊が学校教育の場で活動することは、「政治的中立性を損なう恐れがあります」とし、県民が悲惨な沖縄戦を経験したため軍事組織に否定的な家庭も多いことも挙げ、コンサートの中止を求めた。
県教組の中止要請について、那覇基地の渉外室は、報道で知ったといい、学校の判断については、「コメントは特にありません」と取材に答えた。
コンサート中止が地元紙などで報じられると、ネット上では、「公立学校に軍隊入れんな」と擁護する声も一部にあったが、疑問や批判の声の方が多かった。
「子供たちを楽しませるためのコンサートなのに」「一方的な決めつけは残念に思いました」「沖教組による職業差別に屈したのか...」といった意見が書き込まれている。
自民県議は「大問題」、議会で取り上げる考え
コンサート中止について、新垣淑豊県議(自民党)は、Xの投稿で、「自衛隊の音楽隊の演奏を子どもたちが聞く機会を潰してしまったことは大問題」などとして、県議会で取り上げ、県教委の見解を求める考えを明らかにした。
琉球新報の1月25日付記事によると、那覇市立小学校が市民団体に提供した資料では、「多様な考えやご意見があることを考慮し、中止を決断」したと記載されていたという。J-CASTニュースでも、学校に取材しようとしたが、校長らは打ち合わせ中などとして話が聞けなかった。
那覇市教委の学校教育課は30日、取材に対し、「コンサート中止は聞いていますが、学校の行事ですので、学校で判断しています。事情を聴く予定はありません」と話した。学校の説明では、PTA会長から中止にしたいと話があったという。
中止要請をしたことについて、沖縄県教職員組合の中央執行委員長は同日、「職業差別ではありません」と取材に答えたうえで、次のように説明した。
「自衛隊が基地内で音楽祭をすることについては否定しません。音楽を純粋に聴きたいというのも理解できます。ただ、学校でやることには懸念があります。沖縄戦の歴史があり、自衛隊が米軍と訓練していることなどに関して、複雑な感情を持つ人もいます。そのことについて、学校は配慮するべきでしょう。学校内でやるのはよろしくないので、学校外でやっていただければと思います。今回は、学校で総合的に判断されたのではないかと考えています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)