ブランド店で爆買い
最後に、中国側からの分析も紹介したい。
前述の通り、2024年春節は、日本旅行の盛り上がりはイマイチだった。シンガポール、マレーシア、タイが中国人向けの観光ビザを免除し、そちらに関心が向いただけでなく、処理水問題で日本関連のプロモーションが手控えられた。
だが、「実利」を取るのも中国人の特徴で、春に円安が進むと、中国人の訪日旅行は急回復した。
ルイ・ヴィトンを筆頭に「高級ブランドの商品を日本で買うとこれくらいお得」という情報がSNSで広がり、中国の節約志向の高まりを背景に、日本の中古ブランド店の人気も高まった。
実際に買い物旅行に来た30代の中国人女性は、「日本の中古市場は鑑定や流通システムがしっかりしているので、安心感がある」と話した。
コロナ禍前のように、団体旅行客が温水洗浄便座や炊飯ジャーを大量に買う、というような分かりやすい行動は見られなくなっているし、体験消費も着実に広がっているのだろう。
だが、中国人旅行者にとって日本での買い物は最大の目的であり、観光庁の調査でも買い物額は中国人が突出している。
日本旅行人気は今年の春節でも続いており、中国のオンライン旅行サイトの複数のデータでも、人気海外旅行先として日本が筆頭に挙がっている。現地メディアによると、日本人気のあまり、航空券価格が欧州より高くなるケースも出ているという。
【筆者プロフィール】
浦上 早苗(うらがみ・さなえ):経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。新聞記者、中国に国費博士留学、中国での大学教員を経て現職。近著に「崖っぷち母子 仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ」(大和書房)「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。