2025年は「短時間正社員」がクローズアップされる
――2024年は、働く女性の問題では「年収の壁」が大きくクローズアップされました。2025年は、女性がより働きやすくなるためには、何がクローズアップされるでしょうか。
川上敬太郎さん 引き続き、年収の壁は2025年もクローズアップされると思います。
仕事と家庭を両立しながら働く女性の多くが年収の壁を意識していますし、年収の壁は一つではなく山脈のように連なっているので、103万円とか106万円とか130万円とか、どれか一つを切り取って修正するだけで解消できるものではないからです。
一方で、石破茂首相が昨年(2024年)の所信表明演説で言及した短時間正社員は、働き方の新たな選択肢となる可能性を秘めています。いまは育児との両立などで福利厚生的に導入されることの多い短時間正社員ですが、副業も促進されつつある中、就業環境の柔軟性と仕事のやりがい、キャリア形成、収入増などを同時に実現できる戦略的人事施策となりえます。
上手く制度設計して導入できれば、働き手と職場双方に、これまでになかったメリットをもたらすと思います。
――短時間正社員のメリットとは何ですか。
川上敬太郎さん やむを得ない事情で長時間勤務できない社員の離職を防ぎ、優秀な人材を確保できます。また、働き方の幅を広げることで、社員のモチベーションアップや定年を過ぎた高齢者の活躍なども見込めます。
短時間正社員の戦略的導入など、仕事と家庭を両立させる仕組みの充実化は、必ずしも女性だけにメリットをもたらす施策ではありません。
「男性は仕事、女性は家庭」といった性別役割分業意識が見直され、男性も含めて家オペレーションの主体となっていく「一億総しゅふ化」が進んでいけばいくほど、柔軟かつ生産性高く仕事して、高賃金が得られる働き方の必要性は、性別に関係なく高まっていくのではないでしょうか。
――コメント欄では、さまざまな意見が出ています。私は「性別に関係なく優秀な人材をもっと活用できる社会にしないと、日本はどんどん貧しくなる」という意見が響きました。川上さんはどのコメントが印象に残りましたか。
川上敬太郎さん 「ガラスの天井があらゆるところにある」というコメントが印象に残りました。少しずつであっても女性が働きやすさを感じられる方向に進む兆候が見られる中、女性の働きやすさに対する期待感も並行して高まっていくかもしれません。
すると、昇進しづらいとか賃金が上がりづらいとか、これまでハッキリとは認識できていなかったことにも「あれ?」と疑問を感じることも増えそうです。パッと見は目に映らない「ガラスの天井」を都度発見しながら、それを割って前へ進んでいく、という活動の必要性が今後さらに高まっていくように感じます。