「服務規律違反」で懲戒処分にできる可能性も
それでは、社員の担当業務がクライアントからの受託案件でなければ、問題にならないのだろうか。Aさんは首を横に振る。
「最も重大なリスクは、セキュリティです。IT企業ではどんなシステムでも、顧客情報など機密性の高い情報を取り扱うものです。アルバイトにこれらの情報へアクセスさせることで、情報漏洩のリスクが高まります」
こうした行為は、会社のセキュリティポリシーや内部規定に違反し、万一問題が発生したときには企業全体の信用を毀損しかねない。Aさんは「IT企業に勤めるエンジニアなら、抵抗感が相当あるはずでしょうけど」と付け加える。
また、会社に無断でアルバイトに自分の業務をやらせていることが発覚した場合、実害の有無にかかわらず「就業規則違反で懲戒処分にできる可能性が高い」という。
厚生労働省のモデル就業規則では、服務規律として「労働者は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職務能率の向上及び職場秩序の維持に努めなければならない」と規定している。
Aさんは「これは、社員が自らの責任で業務を遂行することを前提としていると解釈でき、会社に無断で第三者に委託することは、『誠実さを欠く行為』と解釈される可能性が高い」と指摘する。
また、「会社の指示命令に従い」「職務能率の向上及び職場秩序の維持」といった規定にも違反していると問題視されるかもしれない。
加えて、就業時間中にサボって仕事以外のことをしていること自体が、遵守事項として規定される「勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと」などに違反するおそれがあるという。