シニアカーとは高齢者が移動するため、モーターで駆動する低速の電動車だ。道路交通法上は歩行者扱いとなり、介護保険でレンタルできるものもある。シニアカーは一般名詞で、「電動車いす」などとも呼ばれ、スズキは商品名として「セニアカー」と呼んでいる。
歩けなくなった高齢者が買い物や通院などで移動する際、便利なため、普及が進んでいる。最高速度は時速6キロ程度で、速く歩くスピードとさほど変わらない。運転免許を返納した後も運転することができるし、歩道を走ることができるので高齢者には都合がよい。前かごのほか、シート下にトランクがあるので、買い物などにも便利だ。航続距離は満充電で30キロ以上走ることができるものもある。
注意、人間の身体がむき出し
ただし、注意も必要だ。シニアカーは自転車やスクーターなどと同様、ドアや屋根がない。低速とはいえ、人間の体がむき出しの状態で運転することになる。運転中に段差を踏み外して転倒したり、道路を横断中に自動車などと接触したりすることになれば、運転者に危険が及ぶ。
電池やモーターを積むシニアカーの重量は車種によるが、50キロから100キロ程度ある。このため自転車のように簡単に取り回すことはできない。モーターの電池が切れたら取り回しは困難だ。電池の残量には注意する必要がある。
またシートの座面位置が高いため、急な坂道や段差を乗り越える時などは不安定な状態になる。このため転倒事故などが起こりやすい。
警察庁によると、シニアカーなど電動車いすの交通事故は2016年、全国で155件起きており、このうち9人が死亡している。
ただし、電動車いすの単独事故、電動車いすが歩行者とぶつかってケガをさせた事故は交通事故に含まれないから、シニアカーの事故は実際にはもっと多いと考えるべきだろう。
155件の事故の6割以上は道路の横断中に発生している。昼間、買い物や散歩中の事故が目立っているという。このため警察庁は「電動車椅子の安全利用に関するマニュアル」を定め、高齢者に次のように安全運転を呼び掛けている。
「後方と発進方向の安全確認をきちんとする。バックミラーだけに頼らず、必ず自分の目で確認する。周り(特に後方)の安全が確認できたら、ゆっくりとアクセルを操作する」
「乗り越えられない段差や溝を無理に通過しようとすると、転倒したり溝にはまって動けなくなったりするおそれがある。そのような段差や溝は避けて通行する」
「段差や溝を乗り越える場合は、前輪のタイヤを段差や溝に直角にする」
利用者に一読を勧めたい。
(ジャーナリスト 岩城諒)