北海道小樽市内のJR朝里駅近くで中国人観光客が列車にはねられて死亡する事故が起き、海の写真を撮りたいと線路内に立ち入ったことが原因だったと、いくつかのメディアが報じている。
同市内では、ゆかりの映画やドラマの影響でインバウンド客が急増しており、一部の迷惑客によるルール違反なども相次いでいる。どんな状況なのか、小樽市の観光振興室などに話を聞いた。
踏切では、英語や中国語、韓国語で「警告」してあったが...
「昨年度から、インバウンドのお客様が増えており、冬の時期に多く来られますね。韓国や中国など海外のドラマでロケ地になった影響とも聞いています」
JR北海道の広報部では、J-CASTニュースの取材に対し、こう話す。
小樽市は、俳優の故・中山美穂さん主演の映画「Love Letter」のロケ地として、韓国では有名だ。朝里駅は、中国映画「恋愛中的城市」のロケ地として、中国で知られている。
そんな中で、2025年1月23日の11時30分ごろに悲劇が起きた。
報道によると、小樽市内のJR函館線・朝里駅近くの線路上で、観光で訪れた中国人女性(61)が、新千歳空港行きの快速エアポートにはねられた。意識不明の重体で病院に搬送されたが、その後に死亡した。
はねられた場所は、踏切から約50メートル離れた線路上で、海がきれいに見えるという。女性は、スマホで海の写真を撮るために、夫と一緒に線路内に立ち入っていて、事故に遭ったとされている。テレビのニュースで流れた映像を見ると、この場所からは、地面に積もった雪の先に青い海原が広がっていた。
この2人がどこから入ったかは分からないが、踏切には、線路内に立ち入らないようJR北海道が「警告」する看板が、英語や中国語、韓国語でも書かれて立っていた。
同社によると、朝里駅は無人駅だが、ホームや線路に近づく観光客もいることから、警備員1人を配置している。列車が来ないときは、踏切まで巡回しているという。観光客は、冬場に多いことから、24年は1~2月末、25年は前年12月から3月中旬まで警備員を置く予定だ。今後は、1月末からの中国の春節や札幌の雪まつりに備え、JRでは、主要駅で警備員を追加配置するとしている。
道路いっぱいに歩き、車が立ち往生して生活に影響
小樽市が1月7日に発表した24年度上期(4~9月)の「観光入込客数の概要」によると、市内を訪れる外国人観光客は、クルーズ船の寄港増も相まって、コロナ前の水準をも上回っている。上期の観光入込客数は約396万人と、前年同期に比べ約31万人も増えた。外国人宿泊客数は、統計開始以来の最多となり、台湾、韓国、香港、中国、シンガポール、タイ、アメリカからの宿泊客が多かった。
インバウンド客について、市の観光振興室は24日、25年に入って急増したとして、一部の観光客によるルール違反などの行為が前年から目立っていると明かした。
「道路いっぱいに歩いたり、一部エリアでは、道路に大の字に寝転がって写真を撮ったりする行為が見られます。また、職員が直接見たわけではありませんが、線路の脇を歩いたり、警報機が鳴っても踏切の真ん中で撮影したりする人がいると、近所の方から聞いています」
道路いっぱいに歩くため、車がクラクションを鳴らしても、すぐに避けない観光客もいるという。車が坂の途中でストップした場合は、雪道で滑って上がれなくなることもあるとした。住民の生活にも、大きな影響が出ているようだ。
「海を見てみたい、海をバックに撮影したい、という声もよく耳にしますね。推測ですが、海や雪のない地域から来られているからではないでしょうか。小樽に来て、『雪と海と青い空が美しい』との声を聞きます」
とはいえ、一部の観光客による過度の混雑やマナー違反から住民生活に支障が出ており、市では、警察の協力の下で24年10月にトラブル防止のための注意喚起ポスターを作り直し、駅の周辺や電柱などに貼り出している。ポスターでは、「線路で立ち止まる行為」「道路上で写真撮影する等車の通行を妨げる行為」などは、「犯罪です 懲役や罰金等が科せられます」と英語や中国語、韓国語でも呼びかけている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)