「かかりつけ医」倒産が最多 コロナ禍で患者に見放された「サービス力」ない診療所が浮き彫りに

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独立開業医が、収益性の高いエリアで争奪戦を開始

――なるほど。ところで全体の倒産件数の大半を診療所と歯科医院が占めています。やはり、両方とも施設数が多い過当競争が大きな理由の1つでしょうか。

阿部成伸さん 病院(組織的な構造)と違って診療所と歯科医院の多くは先生とその奥さまや少数のスタッフで経営されているような小さな事業者が大半です。病院を「会社」と例えるならば、診療所や歯科医院は「個人経営者」というイメージです。

倒産しやすい事業者の傾向としては、どうしても事業規模の小さいところ、資金力の弱いところが多くなりますし、同業者が多ければその分、競争も激しくなりますので、診療所と歯科医院の倒産が増加しやすいわけです。

――実は、私自身のかかりつけ医もかなり高齢の方で、医療機関専門のM&A(企業の買収合併)コンサル会社に後継者選びを頼んでいますが、うまくいかないようです。診療所の後継問題はどのように解決すればよいと考えていますか。

阿部成伸さん 特に診療所や歯科医院は、病院と違って「先生」に患者さんが付くと思います。人気商売ということです。

そういう意味ではコンサルが連れてきた、「部外者」では、医師として優秀であってもそれまで定着していた患者さんを引き留めることはなかなか難しい。それこそ患者さんはかかりつけ医の見直しをされるかもしれません。

前経営者の思いや方針、地域性などをしっかり理解し、全てを新しくするのではなく、残すべきことをしっかり引き継ぐ気持ちがなければ難しいと考えます。

――その一方で、この10年間で病院や歯科医院の施設数が減少しているのに、診療所の数だけが増加し、さらに競争に拍車をかけていることが不思議です。その理由はなんでしょうか。

阿部成伸さん 悪い言い方になるかもしれませんが、医療機関を経営するうえで収益性の高いエリアとそうでないエリアがあるかと思います。たとえば高齢化が進むエリアでは患者さんは増えるかもしれませんが、利益率は低下する傾向があるのではないでしょうか。

そういった収益性なども踏まえて、エリアを選定して施設を増やしている(M&Aを含む)事業者がいることや、病院に勤務していた医師が独立するケースなどが要因になっているのではないでしょうか。

時代の変化や働き方の変化の中で「自分の時間を確保したい」「決まった時間の中で働きたい」という考えを強く持つ勤務医は増えていると思います。独立して経営者となることで、やりがいだけでなく、金銭的、時間的に余裕を持てる暮らしを目指して独立開業される方は多いと思います。
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