広島県竹原市内の大久野島で2024年からウサギが相次いで死んだ問題は、動物愛護法違反の現行犯で県警に逮捕された会社員の男(25)が、関与をほのめかしているといくつかのメディアが報じている。
現行犯逮捕に至ったのは、島で25年間活動しているウサギ写真家夫婦の執念の追跡があった。その一部始終とは――。
望遠レンズで気づかれないよう遠くから様子を観察し...
「今回のことで、実は私たちの心はぼろぼろになっています」
「うさぎ写真家uta」として島で活動している中村隆之さん、麿矢さん夫妻は2025年1月22日、自らのブログ「~うさぎの楽園 『大久野島』~ うさぎ写真家uta」で男の逮捕に至るまでの心境をこう明かした。
報道によると、逮捕された男は、21日17時30分ごろ、島の遊歩道でウサギ1匹を蹴って暴行した疑いが持たれている。ウサギは、すでに死んでいた。
島では、24年11月下旬から25年1月中旬まで、少なくとも77匹のウサギの死骸が見つかったと環境省が発表していた。短期間にこれほどの数が確認されたのは初めてといい、人為的な原因の可能性もあるとみて、同省が調べていた。
ウサギを蹴ったことについて、男は、「可愛いからやった」と竹原署の調べに容疑を認め、「いじめたらどんな反応をするのか気になった」と供述したという。大量死に関わったこともほのめかしており、同署がさらに調べている。
実は、男を現行犯逮捕して、警察に引き渡したのが、中村さん夫妻だ。
うさぎ写真家utaの公式X(@utajima)やブログによると、中村さんは、感染症などの可能性もあるものの、状況などを鑑みて、人為的なものだろうと考えていたという。そして、21日になって、複数のウサギの死骸と両足を骨折したウサギが見つかり、「犯人が今まさに島に居ると断定」した。
中村さんの協力者から、「怪しい人物がいる」との情報を得て、島でその人物を探した。その結果、今回の男を見つけ、望遠レンズで気づかれないよう遠くから様子を観察した。すると、ニンジンでウサギを誘い出して捕まえようとしていたという。
死骸が多数見つかった日と、男が島に来たと話した日も合致
中村さんがテレビ局に提供したそのときの映像を見ると、白いバッグを肩にかけ、黒いダウンを着た男がニンジンを手に持ち、柵の前からウサギに与えていた。その後、男は、そっと柵をまたぐと、今度はニンジンを地面に置き、周囲を何度も見渡す。ウサギが近づいて来たのか、捕まえようと手を大きく開く姿が映っていた。
中村さんの投稿によると、男がウサギを捕まえようとしたところ、近くを人が通り、いったんはあきらめたという。しかし、中村さんが男を尾行していると、17時30分ごろにウサギを蹴るのを目撃して、男を取り押さえた。
警察が島に到着するまでの間、男を問いただしたところ、24年11月から多数のウサギを殺害したことを認めたという。また、死骸が多数見つかった日と男が島に来たと話した日も合致したとしている。
現行犯逮捕について、中村さんは、「大好きだった子たちを手にかけていた犯人を目の前にすると、怒りと悲しみといろんな感情が込み上げました」とブログ投稿で明かした。そのうえで、「通常の私たちに戻るまで、もう少し時間がかかりそうですが・・・島でお会いするお声かけしてくださる方が、みなさんお優しいので、心救われています」と周囲への感謝の思いもつづった。
24日のブログでは、「今も元気で過ごしてくれているうさぎさんたちと優しく見守ってくださる皆様のおかげで、私たちも元気を取り戻しております」と報告し、「今回の件は私たちだけではなく、島にいつも行かれている皆様や現地の皆様の『違和感』情報がなければ絶対に解決しませんでした。皆様のうさぎさんへの愛情に感謝いたします」と強調していた。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)