SNSのコミュニケーショントラブル 「仲がいい」年配者同士ほど多いのはなぜ?...担当者に聞いた

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   SNSによるコミュニケーショントラブルの経験は、若い男性がもっとも多いことが、NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2025年1月20日に発表した「SNSでのコミュニケーショントラブル調査」でわかった。

   また、スマホを長時間利用する人ほどトラブルに巻き込まれるケースが多くなる。どうすればトラブルを避けられるか、調査担当者に聞いた。

  • SNSでのコミュニケーショントラブルに気を付けよう(写真はイメージ)
    SNSでのコミュニケーショントラブルに気を付けよう(写真はイメージ)
  • (図表1)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(モバイル社会研究所作成)
    (図表1)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(モバイル社会研究所作成)
  • (図表2)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(スマホ利用時間別)(モバイル社会研究所作成)
    (図表2)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(スマホ利用時間別)(モバイル社会研究所作成)
  • (図表3)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(友人との対面交流頻度別)(モバイル社会研究所作成)
    (図表3)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(友人との対面交流頻度別)(モバイル社会研究所作成)
  • (図表4)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(友人との非対面交流頻度別)(モバイル社会研究所作成)
    (図表4)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(友人との非対面交流頻度別)(モバイル社会研究所作成)
  • SNSでのコミュニケーショントラブルに気を付けよう(写真はイメージ)
  • (図表1)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(モバイル社会研究所作成)
  • (図表2)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(スマホ利用時間別)(モバイル社会研究所作成)
  • (図表3)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(友人との対面交流頻度別)(モバイル社会研究所作成)
  • (図表4)SNSでコミュニケーショントラブルを経験した割合(友人との非対面交流頻度別)(モバイル社会研究所作成)

コミュニケーショントラブルが一番多いのは若い男性

   モバイル社会研究所の調査(2024年2月)は、全国の15~59歳男女3936人が対象だ。SNSの中でもXとInstagram、Facebook、TikTokの利用者だけを調査した。

   まず、15~59歳のSNS利用者を対象に、SNSでのコミュニケーショントラブル、具体的には「自分の発言で他人を傷つけた」「複数人から批判的な書き込みをされた」「言い合いになった」の3点を経験したかを聞いた。

   その結果、各トラブルを経験したと答えた割合は4~7%程度だが、性年代別では特に若年男性(15~24歳)の割合が高く、「言い合いになった」「複数人から批判的な書き込みをされた」がそれぞれ1割を超えている【図表1】。

   次に、スマホの利用時間による違いを調べた。すると、ほとんどの年代・トラブルで利用時間が長いほうがトラブル経験の割合が高かった。特に、「言い合いになった」に着目すると、15~24歳では4ポイント、40~59歳では3ポイント以上の差がみられた【図表2】。

   続いて、友人との交流頻度による違いを調べた。まず、各年代で外食や旅行といった直接顔を合わせる対面交流頻度が多い群と少ない群に分けて聞いた。すると、友人との対面交流が多いほうがトラブル経験の割合が高かった【図表3】。

   友人と直接顔を合わせるほど親密だと、SNSの利用・発信なども多くなり、結果としてコミュニケーショントラブルが増えると考えられるという。

   次に、電話やLINE、メールなど顔を合わせずに連絡する非対面交流の頻度との関係を調べると、興味深い結果が出た。

   若い年代では非対面交流が少ないほうがトラブルの割合が高い傾向があるのに、逆に年齢が上がると非対面交流が多いほうがトラブル経験の割合が高くなるのだ【図表4】。

   つまり、若い年代ではあまり電話やLINEをしない関係のほうがトラブルは多い。逆に、こと年配層では、頻繁に電話やLINEをし合う関係のほうがトラブルは多くなるというわけだ。

   これは、いったいどういうことだろうか。

スマホ利用時間が長くなり、コミュ力が欠如してくるのでは?

   J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当したモバイル社会研究所の小島誠也さんに話を聞いた。

――SNSでのコミュニケーショントラブルが、若い男性一番多くなっているのはどういう理由からでしょうか。モバイル社会研究所のこれまでの調査では、特にInstagramやTikTokの利用頻度は若い女性のほうが若い男性より高い結果が出ており、SNSの利用は若い女性のほうが多いのではないでしょうか。

小島誠也さん InstagramやTikTokの利用率や頻度は若い女性で高いものの、Xは性差が少なく、むしろ男性のほうが少し高い傾向も見られます。こうしたことから、一概に女性のほうがSNSを多く使っているとは言えません。

また、若い世代のネット上でのコミュニケーショントラブルについては、男性のほうが多いという結果がほかにも見られます。たとえば、総務省が2024年6月に発表した「青少年のインターネット利用調査」でも、「他人の投稿と比べてストレスを感じた」割合が、中学生では女子のほうが高いですが、高校生では男子のほうが高くなります。今回のSNS調査においても同様の結果が見られたものと思います。

――スマホの利用時間が長いほど、コミュニケーショントラブルが多い結果が出ていますが、これは単純にそれだけSNSを使っている時間が長いからということでしょうか。あるいは、スマホの利用時間が長い人特有の生活態度からくる「他人とのコミュニケーション能力の欠如」などは考えられないでしょうか。

現在70代の私からみると、いまの若い世代はスマホの利用時間が長くなりすぎている気がします。スマホばかり長く使ってネット空間にいると、生の人間関係が少なくなり、他人に対する気遣い、配慮、思いやりなどの気持ちが欠けてくる面もあるのではないかということです。

今日のSNSによる誹謗中傷の氾濫や、二者択一に決めつける傾向などの影響をより多く受けてしまうのではないでしょうか。

小島誠也さん スマホ利用時間が長いことが、一概にコミュニケーション能力の欠如につながるとは言えません。スマホの利用時間が長いほど、SNSの利用時間が長くなり、利用頻度や発信頻度が高くなることが考えられます。結果としてコミュニケーショントラブルを経験する割合も増えるものと考えられます。

また、SNS上などの非対面のコミュニケーションにおいては、対面に比べて攻撃的な表現をしやすいということも言われており、そうしたことが影響しているものと考えられます。

若い人のトラブルには、ある意味「言葉足らず」の傾向がある

――友人との対面交流が多いほど、トラブル経験の割合が高い理由もちょっと不思議な気がします。リポートでは「それだけ交流頻度が高いとSNSの発信頻度が高く、結果としてコミュニケーショントラブルが多くなる」と説明していますが、私がいま述べたように、友人との対面交流が多いほどコミュニケーション力が高まるのではないでしょうか。

小島誠也さん 本文中でご説明差し上げましたとおり、友人との交流頻度と発信頻度との間に相関があり、結果としてトラブルの割合も増えるものと考えられます。友人との対面交流の頻度より、SNSの利用頻度や発信頻度のほうが関係は強いと考えられます。

――ところで、電話やLINEなどの「非対面交流」が多いか少ないかの調査結果が非常に面白いです。若い世代では、電話やLINEでのやりとりが少ないほうがトラブルの割合が高いのに、年配層では逆に電話やLINEでのやりとりが多いほどトラブルの割合が高いというのがどうも腑に落ちません。

私は70代の年配層ですが、電話やLINEでのやりとりが多い相手とは仲がいいですから、むしろトラブルが少なくなると思うのですが。

小島誠也さん 若い世代はSNSやメッセージアプリを通じて頻繁にやり取りをしていますので、デジタルな交流にも慣れています。その中で電話やメッセージのコミュニケーション系の非対面交流が少ない人たちは、誤解やミスコミュニケーションが生じやすい、ある意味「言葉足らず」の傾向があるのかもしれません。

また、若い世代の中で電話やメッセージなどの交流が少ないということは、その分SNSの利用や発信頻度が高い可能性も考えられ、それによってトラブルが多くなっているのかもしれません。

一方、中高年層については、電話やLINEなどの非対面交流を活発に行っている方々のほうが、SNSでの発信頻度も高い可能性があります。これにより、デジタルコミュニケーションの場が増え、結果としてトラブルが生じやすくなっていると考えられます。

発信する前に不適切な内容はないか、書いた内容を確認しよう。

――なるほど、腑に落ちました。最後にSNSのコミュニケーショントラブルを避けるにはどうしたらよいかアドバイスをお願いします。

小島誠也さん 不用意な発信はトラブルの元となりますので、発信する前に書いた内容を確認し、情報に誤りがないか、不適切な内容や誤解を招く表現が含まれていないかなど確認していただくとよいと思います。

また、公開範囲などを適切に設定することで、不特定多数に見られるリスクを減らすことができ、トラブルの予防につながると思います。こうしたことを心がけていただき、健全なデジタルコミュニケーションを楽しんでいただければ幸いです。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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