2025年1月17日、フジテレビの港浩一社長が中居正広問題で記者会見を行った。しかし、オープンな形での記者会見ではなかった。新聞社や通信社14社で構成する「ラジオ・テレビ記者会」の加盟社しか参加できず、加盟していないNHKや民放各局もオブザーバーとして参加が認められたものの、週刊誌やウェブメディア、フリー記者らは参加できなかった。生中継や動画撮影はできず、写真撮影は会見の冒頭一定時間のみ許可された。一昔前の会見スタイルで、一般企業がこういう対応をすると、マスコミからそうスカんを喰らうが、そのマスコミがやってしまった。いわゆる「おまゆう」だ。
周りでサポートする必要があるが...
しかも、港社長は、第三者の弁護士を中心とする調査委員会による調査があるからといって、回答を差し控えるという発言を何度も繰り返した。ただし、この第三者の弁護士を中心とする調査委員会というのも、一昔前の手法だ。弁護士といっても、フジグループというクライアントの意向が働くおそれがあるので、日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会のほうがより独立性が高いともいわれている。
それにしても、なぜこんな無様な社長会見になったのか。社長自らが制作畑なので現場実態をより深く知っているため、それで記者会見を行いたくなかったという意見もある。
いずれにしても、フジグループ自体がグダグダだ。本体が酷ければ、周りでサポートしなければいけない。
監督官庁の総務省はどうなっているのか。村上誠一郎総務相は、独立性が確保された形でできるかぎり早期に調査を進め、信頼回復に努めるよう求めると、やや距離を置いているようだ。それもそのはずで、総務省からは、フジグループに対し、複数の天下りが行っている。
筆頭格は山田真貴子氏だ。総理秘書官、総務省情報流通行政局長、内閣広報官などを歴任している。21年3月、接待事件で内閣広報官を辞したが、24年6月フジ・メディア・ホールディングス(HD)およびフジテレビ取締役に就任している。しかし、今回の事件では全く機能していない。
総務省からの天下り問題も信頼回復の重荷に
フジグループには総務省出身者の天下りが多いように思える。それはフジグループが脛に傷を持っているからだろう。フジテレビには、外資規制がかかっている。外資規制は議決権の外資比率が20%以上の事業者は認定を受けられず、違反すれば総務相は認定を取り消さなければならない。14年にフジテレビは外資規制違反があったが、21年にその事実が発覚するまで伏せられていた。外資規制違反は直ちに解消されたが、総務省の温情措置の結果である。このため、フジテレビはもともと監督官庁の総務省に弱い上に、さらに弱い立場になっていたわけだ。
ここで総務省がフジグループに対して断固たる対応ができなければ、天下り問題はさらにフジグループの信頼回復の重荷になるだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。