プロボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋、31)が2025年1月24日、東京・有明アリーナで、WBO同級11位キム・イェジョン(韓国、32)を相手に防衛戦を行う。
「井上尚弥との対戦ほどボクシング界で前途多難なものはない」
当初、WBO・IBF同級1位サム・グッドマン(オーストラリア、26)との対戦を予定していたが、グッドマンが左目上を負傷し出場を辞退。グッドマンに代わって、急きょキムが挑戦者に選ばれた。
キムの戦績は、21勝(13KO)2敗2分で、井上の28勝(25KO)無敗と比べると、見劣りするのは否めない。これまで世界タイトル戦の経験はなく、地域タイトル戦がキャリア最大の試合だ。
下馬評で「井上圧倒的有利」とされる中、米スポーツメディア「The Sporting News」(ウェブ版)は23日に井上の特集記事を公開し、キムの可能性に言及した。
記事では、「井上尚弥との対戦ほど、ボクシング界で前途多難なものはない。2週間足らずの期間で交代要員となったキム・イェジュンに、十分なギャラが支払われていることを祈るしかない」と、キムにとって厳しい試合になるとした。
そして、試合の展開を、こう予想した。
「キムの夢はたちまち悪夢に変わるだろう」
「井上の完璧で屈強なフットワーク、正確なショットの選択、そしてパワーを前にすれば、キムの夢はたちまち悪夢に変わるだろう。キムが番狂わせを起こせば、タイソンVSダグラス戦の領域に突入することは間違いない。しかし、常に勤勉な井上が、かつてのアイアン・マイクのような愚行(調整不足)に手を染めることはないだろう」
マイク・タイソン(米国)はヘビー級3団体統一王者だった1990年2月、東京ドームでジェームス・ダグラス(米国)を相手に防衛戦を行い、10回KOでプロ初黒星を喫した。
無敵のヘビー級王者が、世界的に無名の挑戦者に敗れた事実は、「世紀の大番狂わせ」と世界中に報じられた。当時の米メディアの報道では、タイソンの怠慢による調整不足が指摘された。
英ボクシング専門メディア「Boxing News」(ウェブ版)も、キムの劣勢を予想した。
記事では「彼ら(キム陣営)の驚くべき自信は、井上の優れた攻撃レパートリーのどこかに、防御の弱点をいくつか見つけ出したことを示しているに違いない。そして、これほど短期間で28勝(25KO)無敗の井上と対戦するという大胆な決断も、ある程度の恐れ知らずから生まれたものかもしれない」と分析した。
そして、こう続けた。
「いずれにせよ、負傷したサム・グッドマンに代わって出場したキム・イェジョンは、世代を代表する才能とリングを共有することの意味をすぐに理解するだろう。キムは井上のような実力のかけらさえも持っていることをまだ証明できていない」
「モンスター」井上の25年の初戦となるキム戦。注目のゴングは24日に鳴る。