GXの知識ゼロでも、使えるスキルと推進力があれば年収アップ
――転職にあたり、GX関係の講座や検定の受講など、リスキリングの必要性を強調していますね。ここでも実際の事例を紹介してください。
石井宏司さん 現状はまだGX関連のリスキリングサービスや検定が登場し始めた段階であり、完全未経験からGX関係の講座を受講するなどして転職につながったケースは少ないです。しかし、未経験ながら経営企画や事業企画、管理職経験などが評価され、転職にいたったケースがあります。
成長フェーズにある再生エネルギー系の企業が、脱炭素領域も含めた中期経営計画の策定や新規事業企画など、前のめりに行動できる人材を探していました。
そこに、元経営企画職だった50代のCさんがマッチング。GXの専門知識はなかったものの、10年以上の知見経営や既存社員にはない推進力があることなどが評価され、転職にいたりました。
スキルや経験の即戦力性から、年収は600万円から数十万円アップして転職決定しています。
――なるほど。かならずしもGXの知識がなくて、前職でつちかったスキルとバイタリティーがあれば年収アップも期待できるわけですね。
石井宏司さん GXというと新しい領域のようにも感じますが、実は経験を横展開できる可能性に気付ける、良い例だと思います。
未経験領域への転職は通常年収が下がることが多いですが、こうした経験やポータブルスキルがあると年収交渉のしやすさにもつながってくるでしょう。
――リポートでは、ほかに採用意欲が高まる業界として、金融業界と小売、通信、IT業界などとのコラボ関連を取りあげていますね。具体的にはどういうケースがあるのでしょうか。
石井宏司さん 金融業界とIT業界でいうと、金融業界では引き続き大型のIT投資、システム投資が想定されています。
金融システム経験があるプロジェクトマネジャーやセキュリティーに強いエキスパートなどは、年齢によらず金融業のIT部門がスカウトしたり、逆に金融業のIT部門の人材をSIerがアカウントマネジャーやプロジェクトマネジャーとしてスカウトしたりするという動きが見られます。
また近年、金融業界では金融系のスタートアップ投資を強化しており、大手金融系の資本が入っているスタートアップには大手から金融商品のエキスパートや、DX関連の仕事をしてきたIT人材、金融まわりのセキュリティーや規制、金融庁対応に長けたエキスパートなどがスカウトされる傾向が見られます。
全体的にエキスパートの採用ニーズがあり、経験値の高いミドルシニア人材がマッチしている状況です。今後もその動きがより顕著になってくると予想しています。