即戦力が期待された2人のケースをみると...
J‐CASTニュースBiz編集部は、報告をまとめたパーソルキャリア・ミドルシニア事業企画部ゼネラルマネジャーの石井宏司(いしい・こうじ)さんに話を聞いた。
――ミドルシニアの採用意欲が高まる業界として、第一に脱炭素社会を目指す「GXリーグ」に参加している企業群などを挙げていますが、その理由をもう少し具体的に説明してください。
石井宏司さん 脱炭素、GXといった領域では、「これから脱炭素に取り組まないといけない」「取引先の大企業から徐々に要請が来ている」といった中小企業で、「大企業で脱炭素を先進的にやってきた人材や、脱炭素を実行する手順を知っている人を採用したい」というニーズが増えていると感じます。
また、脱炭素以外の領域でも、中小企業やある程度社員が多くなってきた成長企業は、徐々に間接部門や社内の制度やルールを整えていかないといけなくなってきています。さらに、「大企業と取引を拡大したい」という際に大企業に人脈がある人を採用し、アカウントマネジャーにする企業も出てきています。
氷河期世代には、配下に部下が入社してこない中で、さまざまな改革や体制整備、デジタル化を支えてきた人が一定数います。こういったノウハウを持ったミドルシニアたちが実は貴重な人材である、ということに気づきだした企業は日々増えていると思います。
――実際に転職にいたった人にはどんなケースがあるのでしょうか。
石井宏司さん 2つご紹介します。
過去に数回転職し、IR業務(投資家向け広報)の経験や、土木系企業でサステナビリティ(持続可能性)推進事業に携わった40代後半のAさん。中規模の化学メーカーから、大手化学メーカーのサステナ領域の経営企画ポジションで転職決定した事例です。
Aさんは、前職時代にサステナ推進事業を任され、立ち上げに奮闘した業務経験があったこと、IR知識があり投資家目線を持ちながら経営企画にもかかわれることを期待されたことが大きな評価ポイントでした。
中規模企業から大企業への転職のため、一時的に年収が下がる形でしたが、前職では経験できない規模感の業務ができる点に魅力を感じ、納得のいく形で転職に至りました。
――もう1人はどんなケースですか。
石井宏司さん 50代のBさん。製造業の研究開発職から、エネルギー系企業の脱炭素エネルギー開発プロジェクト推進のポジションに転職しました。
Bさんは、管理職経験や海外赴任経験、さらに専門性の高い領域の開発で技術力に長けていたこともあり、企業からは即戦力として期待され、前職の1000万円からさらに年収がアップしました。
なお、GX領域の即戦力はとても希少なため、このように提示年収を引き上げたり、福利厚生を手厚くしたりすることで採用力を高める企業の動きも見られています。